作品タイトル不明
8「さすがにそれはなくね?」①
夏樹の聖剣が門の神の背中を斜めに斬り裂いた。
返り血が夏樹の顔と衣類を赤く染める。
しかし、殺すまでに至らなかった。
「――ふざ、けんな……ありえねえだろ」
「ふざけんなはこっちだ! 異世界召喚の特典もらってないんですけど! チートちょうだい!」
夏樹は門の神を殺せなかったことを舌打ちした。
ぜっくんと同じく新たな神々の中でも上位に位置する神なのだろう。
なかなか硬い。
「今でも十分すぎるほどチートじゃねえか……お前にチートなんて、いらねえ、だろ」
口から血を流した門の神が、心底信じられないという顔をして夏樹を振り返った。
「まさか二度目の異世界召喚をされるなんて思わなかったよ。精神的苦痛で慰謝料請求しまーす」
「金が欲しいのか、勇者様?」
「――慰謝料はあんたの命だ」
夏樹は全力で斬ることができなかったことを悔やむ。
自分がいない間に、小梅たちが門の神と戦っていたのだろう。
背後から門の神を全力で斬りつければ小梅たちにまで被害があったはずだ。
――門の神を仕留められなかった後悔と、小梅たちを傷つけずに済んだ安堵があった。
「欲しけりゃとってみな。お前の仲間にも言ったが、俺はこれでもラノベ主人公級の力は持っているからな」
「――え?」
「待て、どんな想像したか知らないが、やっぱり嘘。訂正する。そこまでじゃない」
「……びっくりした。正直、負けたと思った」
夏樹が脳裏を掠めたキャラクターは、逆立しても勝てない設定と強さを持っていた。
だが、そうでないのなら、問題ない。
いつも通りに叩き斬るだけだ。
「悪いけど、あんたなんてどうだっていいんだよ。ぜっくんぶっ殺して、晒し首にして、アマイモンと全力で戦うんだ。邪魔するな」
「……晒し首にする必要はあるのか?」
「あんたら新たな神々への見せしめだよ!」
「どうやら、この世界の勇者様は神々や魔族の良き友人のようだ」
「そこがまず誤解なんだよな」
「なに?」
怪訝な顔をする門の神に、夏樹は思いっきり叫んだ。
「てめえらが俺を巻き込まなきゃ、俺からはなんもしねえからぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
どいつもこいつもこちらの都合など気にせず会いにくるし、宣戦布告するし、巻き込んでくる。
整理券配りたい気分だ。
しかも、下からじゃなくて、上から来るのがタチが悪い。
「俺はさっさとこの世界を滅ぼして、日本に帰るんだよ!」
「いや、滅ぼすなよ」
「あ、間違えた。お前らをぶっ殺して、異世界人を鏖殺して、日本に帰るんだよ!」
「言い直しても物騒な勇者だな!」
「お前たちのせいだからね!」
「そりゃ申し訳なかった。これはお詫びだ。受け取ってくれ」
「あん? どうでもいーわー。とりあえず、死んで詫びろ」
夏樹が聖剣を振るい、門の神を再び斬った。
両断するつもりで力を入れたが、門の神が全力で防御に力を入れたようで、肩から腹までしか斬ることができなかった。
人間ならば十分に致命傷だが、相手は神だ。
血を流し、痛みに顔を青くして汗を流しているが、死にはしない。
何度か繰り返せば、いずれ死ぬだろう。
その前に立ち位置を変えて、容赦無く攻撃をすればいい。
夏樹には殺す自信があった。
「次はランダムじゃなくて俺の意思で飛ばしてやる!」
「なにを」
「俺が一回しか異世界転移させることができねえなんて誰が言った! 俺は、一日に三度力を使える」
「え、嘘! あ、ちょ、剣が抜けない! ちょ、腕掴むな! お巡りさん、この人が無理やり!」
「――開門」