軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7「さっさと戻りたいんじゃね?」②

「勇者様!」

「俺は勇者じゃない。ギャラクシーメリーさん河童勇者だ!」

「……先ほどと微妙に違う気がするのですが」

フォーン王国に勇者ダッシュで戻ってきた夏樹を、王女メイリスたちが出迎えてくれた。

最初こそ、魔王と戦う夏樹についていくると言っていたが、拒否した。

夏樹と聖剣さんだけのほうが行動が早いからだ。

「あの、先ほど、凄まじい魔力を感じたのですが」

「うん。さくっと魔王殺してきたよ。でも、予定と違うと言いますか、なんといいますか……」

「なにか問題でもございましたか?」

不安そうな顔をするメイリス。

彼女の背後にいる神官と思われる面々も、夏樹の言う「問題」が気になっている様子だ。

「俺は、魔王と四天王を殺すって約束だったんだけど」

「はい」

「魔王と四天王だけじゃなくて、魔王の城にいる魔族を全員殺しちゃった!」

てへ、と夏樹が舌を出す。

「――え?」

「ついでに白状しちゃうと、魔王の街の半分も消し飛ばしちゃった!」

てへぺろ、と再び舌を出す。

夏樹の背後で、聖剣さんがちょっとイラッとした顔をしていた。

「あ、そうそう。一応、これ、ちゃんと魔王を殺した証拠ね」

アイテムボックスに入れるのはなんか嫌だったので、スーパーの袋に入れて持って歩いていた。

袋をメイリスに渡すと、彼女は中を覗き「――ひ」と小さな悲鳴を上げた。

いきなり生首を見せられたら、その反応も仕方があるまい。

「……ありがとうございます。まるで暗殺者のようなことをさせてしまい申し訳ございませんでした」

メイリス王女は、その場に膝を着き深々と頭を下げた。

神官たちも王女に続き、この場にいる全ての者が感謝の意を示した。

「いえいえ、どういたしまして」

かつて召喚されたブレイバーズ王国は「やって当然」だったが、この世界の召喚主は夏樹に対して感謝と罪悪感を抱いているようだ。

ちゃんとお礼を言えるメイリスはじめ、この場にいる面々の評価は夏樹的に高かった。

(っていうか、肝心な王様とか来ないのねぇ)

(別に会いたくないからいいよ。この王女さんが一生懸命なのはわかったし、ちゃんと民のことを考えていることもわかったから)

(あ、そ)

(それに、ブレイバーズ王国よりはマシだったでしょう?)

(比べたら失礼よ!)

(ですよねー!)

(さ、終わったのなら帰りましょうというか、戻りましょう! あの異世界召喚だかなんだか無駄に名前が長い神をのすまし顔を刻んでやるわ!)

(ひえっ)

よほどこの世界に飛ばされたことが腹に据えかねていたのだろう。

聖剣さんの殺る気は満々だった。

だが、夏樹だって負けていない。

――門の神は絶対に殺す。

「ってことで、元の場所に返してくださいな!」

「勇者様!」

「はい?」

「せめて、お食事だけでも、王も挨拶しておりませんし、お時間をいただければすぐに」

「いいよ、いいよ。別世界から煌めいている勇者が来て魔王を倒しましたなんてことが大々的に知られちゃったらやりづらいでしょう? ごめんね、煌めきすぎてて。なのでこっそり帰ります」

「……残念です。魔族との戦いが終わり、世界が平和になりましたら勇者様の銅像を」

「それこそやめて! あ、そうだ。どうせなら、これでよろしく」

夏樹は懐からメモを渡した。

メモを開いたメイリスは目を見開く。

「あの、これでよろしいのですか?」

「かわいいでしょう?」

「とても可愛らしくはありますが」

「もしこういう種族がいたら手厚く保護してください! それだけ!」

見返りを求めなかった夏樹に、メイリスたちが感涙する。

「わかりました。このメイリス・フォーン、必ずやお約束をお守ります!」

「ありがとう」

「では、帰還の儀を始めさせていただきます」

「よろしくお願いしまーす!」

召喚された部屋に移動し、祭壇の上に夏樹は立った。

メイリスたちは膝を着き、祈りを捧げた。

魔法陣が展開され、夏樹と聖剣さんを淡く白い光が包む。

「勇者様、元いた世界に送り返します」

「うっす!」

「一日も経っていないので、時間はさほど進んでいないと思われます」

「あざっす!」

「勇者様のことは、お忘れしません。どうもありがとうございました!」

涙を流し、感謝の言葉を伝えるメイリスに、夏樹と聖剣さんは手を振った。

そして、光に包まれた夏樹と聖剣さんは、フォーン王国から消えた。

――そして、

「私、なっちゃん。今、あなたの後ろにいるの」

門の神の背後に転移してきた夏樹は、容赦無く聖剣を振り下ろした。

その後、フォーン王国を中心に人間たちは魔族との戦争に力を入れた。

民さえ剣を持ち全面戦争となる。

だが、もう魔族に魔王はいない。四天王もいない。

新たな四天王と魔王が現れたが、急拵えの象徴でしかないため人間の力で倒すことができた。

――一年後。人間たちは勝利した。

犠牲は大きかったが、魔族を全て倒すことが叶った。

勇者が魔族の拠点を大きく破壊してくれたことが勝因だった。

メイリス・フォーンは、勇者に感謝し、彼が手渡したメモに書かれていた絵を銅像にして王都に飾った。

――二頭身の河童さんが剣と盾を持っている、凛々しくも可愛らしい銅像だった。

以後、「河童勇者」として愛されていくのだが。

――それはまた別のお話。