軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6「さっさと戻りたいんじゃね?」①

――夏樹の召喚されたフォーン王国から離れた土地にある魔王の城。

「人間たちはそろそろ限界のようだな」

この世界の魔王は玉座に座り、足を組んでグラスを傾けていた。

魔王の眼前には四天王と思われる魔族四人と、側近の魔族たちだった。

不思議と、禍々しい雰囲気はない。

外見も大きな変化はなく、人間と変わらなかった。

ただ、魔力量が人間よりも多い。

「長かった。大半が魔法を使えない下等生物が大陸を我が物顔で支配していることは我慢ができなかった。ようやく、よくやく私たちの天下だ! 人間を倒し、奴隷とし、我ら選ばれた種族がこの世界の支配者になるのだ!」

「ほーん」

どこかこの場に不釣り合いな声と共に、魔王の胸から剣が生えた。

「――私、なっちゃん。今、魔王さんの背後にいるの」

魔王の手からグラスが落ちる。

グラスが割れ、ワインが床に広がった。

「――魔王様!」

四天王と思われる、美形な魔族が叫んだ。

同時に魔王の胸から剣が抜かれ、椅子の後ろから蹴り跳ばされて床に倒れた。

その後、ぴくりとも動かない。

「――貴様! ここをどこだと」

激昂した魔族の美女が、一振りで四分割になった。

目を見開き、信じられないと口をパクパクさせている。

床に崩れ落ち、絶命したことを確認すると、襲撃者は剣から血飛沫を払い、肩に置いた。

「俺は、寛大な勇者だが早く異世界に帰りたい勇者でもある」

「……どこかで聞いたことあるわねぇ」

勇者こと由良夏樹は、魔族たちを前にして臆することなく足を進めた。

「やあ! こんにちは! 僕、由良夏樹! 思春期な中学三年生! 最近の悩みは、同居人の女性たちが僕のPCの秘密を暴くことさ!」

「なにを訳のわからぬことを!」

「――あんだと? こっちは真面目に困ってんだよぉおおおおおおおおおおおお!」

剣を抜いて襲いかかってきた片眼鏡をかけた知的な魔族を、唐竹割りにした。

左右に分かれた身体から、血と臓物が溢れた。

何が起きたのかわからない顔をした魔族がそのまま前のめりに倒れ、血を撒き散らした。

「な、なんなんだ、お前は」

「そんな、魔王様が」

四天王は残りふたり。

側近はいつの間にかいなくなっていた。

「んじゃ、ま。真面目に説明してあげるよ。俺はフォーン王国に召喚された勇者だ」

「なんだと!」

「あの国め! よほど我々に追い詰められていたと見た!」

「うん。そうだね。で、俺が呼ばれて、魔王は死んだ」

「――――あ」

「――――あ」

激昂した魔族が、すぐに冷静に戻った。

「あんたたちの戦いの理由に興味はないし、どっちも加害者でどっちも被害者なんだと思う。でもさ、それに俺って関係ないんだよね。前に魔王と戦ったときにも同じようなことを言った気がするんだけど、俺は元の世界に帰る。そのためなら、なんだってするってこと」

「ふざけるな!」

「我々魔族の勝利が目前となったというのに! こんなところで!」

夏樹を中心に魔法陣が展開される。

高密度の魔力が集中し、魔法となった。

魔法陣から放たれたのは火柱だった。

夏樹を身体を飲み込み、周囲の酸素と魔力を吸収してさらに火力を増していく。

「ふ、ふはははは! 四天王二人がかりの魔法をくらって無事に済むはずが」

「あ、そういうのいいんで」

夏樹が軽く聖剣を振るうと、火柱は呆気なく消えた。

魔族たちが愕然としている。

「俺もさ、向島市一番の紳士で名が通っているから、戦いなんて野蛮なことはしたくないんだけどさ。捕らえた人間を奴隷にして弄んだり、玩具のように殺したりしているお前たちに紳士でいる必要はないんだよね!」

夏樹は、なにも召喚主を信じたわけではない。

元の世界に戻れることを第一にしているが、利用されるのはごめんだ。

なので、魔族たちの様子を伺った。

そして、この魔族は夏樹が知る魔族とはまるで違う生き物だと知った。

この世界において、魔族という存在は人間が魔力によって変化した存在だ。進化と言う気はない。

要は、人間と元人間で争っている世界だ。

魔族は人間を見下し、支配者になろうとしている。

人間は魔族に争う。

他にも戦争の理由はあるのだろうが、この世界に来てから数時間の夏樹にはわからないし興味もない。

「――聖剣さん」

「わかっているわ」

聖剣さんが消え、聖剣に宿る。

師匠によって肉体の器が拡張された夏樹が、魔力を解放した。

「――そんな」

「魔王様以上」

「あんな雑魚と比べるな」

夏樹は一切手加減をしなかった。

聖剣を振り下ろすと、魔力の刃が渦となり魔王の城と魔族たちを飲み込む。

魔力の渦はさらに魔族の街の半分を飲み込んだ。

――しばらくして、夏樹は全壊した魔王城跡に立ち、半分消えてしまった街並みを人ごとのように眺めていた。