作品タイトル不明
プロローグ「主人公不在じゃね?」
小梅・ルシファーは絶句していた。
自分をはじめ、素盞嗚尊や雷神トールと戦い勝利した異世界帰りの勇者由良夏樹が、まさか抵抗虚しく異世界に飛ばされてしまうとは思わなかった。
そもそも本当に異世界に飛ばされてしまったのか、という疑問がある。
「……よくもやってくれたのう。異世界の神だか、なんじゃか知らんが、俺様の大事な家族に手を出して生きていられると思ったら大間違いじゃぞ?」
「ルシファーの娘だったな。親を超える力を持つと聞いているが……噂など当てにならないな」
「なんじゃと?」
すでに魔王率いる魔王軍と、ブレイバーズ王国軍はぶつかっている。
剣戟の音、雄叫び、悲鳴、魔法の轟音、目まぐるしく響いている。
「天使と魔族の混血。サタンを超える潜在能力。天使でありながら魔族の力を使える規格外。――と、聞いていたが、言うほど強く感じないな。対峙していて、特別な力を感じない」
「言ってくれるんじゃ。夏樹の代わりにおどれをぐちゃぐちゃに――って、言いたいんじゃが、そんな挑発には乗らんのじゃ」
かつての小梅ならば激昂して襲いかかっていただろう。
夏樹を飛ばされてしまったことも含め、感情に任せて暴れていたはずだが、今の小梅の心は落ち着いている。
まず、夏樹がどうにかなるような気がしない。
神、魔族と戦い、果てには宇宙で大暴れした人間が今さら異世界にすっ飛ばされたところでどうなると言うのだ。
ひょっこり戻ってくるに違いない。
小梅自身のことも、赤の他人になにかを言われてもどうでもいい。
「そりゃ、残念だ。じゃあ、まあ、真面目に戦うか。おい、ぜっくん。由良夏樹がいない勇者一行など大した敵じゃない。さっさと潰して……おい?」
「ぜー、ぜー、ぜーぅ」
門の神がぜっくんに視線を向けると、彼は膝を着き、呼吸荒く死にそうだった。
「おーい! 致命傷かよ! ったく、ほれ」
再生できないほど負傷しているぜっくんに、回復術を施す。
血が止まり、傷も癒えるが、ぜっくんの呼吸は荒く完全ではない。
「助かったぞ、幸運の。絶望しながら死ぬところだった!」
「それは望むところだろうに」
「ぜーっぜっぜっぜ!」
なんとか立ち上がったぜっくんだったが、足はふらついている。
「小梅さん、私たちで潰しちゃいましょう」
「そうじゃのう。夏樹が戻ってくる前に全部片付いておったらしょんぼりするじゃろうから、みんなで爆笑すればええんじゃ」
銀子が魔剣を構える。
彼女もやる気満々だ。
銀子だけではない。
「姐さんが戦うまでもねえ。俺たちで十分だぜ」
「せやね。自分らで十分や」
「ボクも負けへんよ」
「十束剣も暴れたがっている」
「僕の二丁拳銃も火を吹きますね」
「大地の勇者なのに、僕も勇者なのにスルーされた。ゆるさんっ!」
「僕も全力で戦うよ!」
男子たちもやる気にみなぎっている。
門の神が笑った。
「いいだろう。俺は戦闘向きの神ではないが、異世界で主人公できるくらいの強さはある。が、とりあえず異世界転生を司る神らしい攻撃をしてやろう」
青年の背後に門が現れ、開いた。
「もしかしたら転生できるかもしれないぞ?」
青年の言葉と共に、軽トラックが飛び出してきた。