作品タイトル不明
エピローグ2「勇者召喚とか勘弁してほしくね?」
夏樹が目を開けると、そこは荘厳な神殿だった。
祭壇と思われる場所に、聖剣を握りしめた学生服の夏樹の姿がある。
「――は?」
周囲を見渡すと、頭から被るような修道服に身を包んだ男女が行く人もいる。
「――は?」
子供から老人まで、涙を流している。
「――は?」
先頭に立っていた少女が、前に出る。
「――は?」
夏樹がいる祭壇の前に膝をつき、頭を下げた。
「――よく召喚に応じてくださいました、勇者様!」
「――はぁああああああああああああああああああ!?」
夏樹は絶叫した。
異世界に飛ばされたのは理解していた。
夏樹の中の殺すリストの第一位はぜっくんであったが、異世界転生だか異世界召喚だかを司る神と入れ替わった。
殺すだけでは飽き足らない。
できるだけ苦しめて「殺してください」と懇願するまで痛めつけようと決める。
「ゆ、勇者様、いかがなさいました?」
だが、まさか「勇者として異世界に召喚」される羽目になるとは思いもしなかった。
二度目の勇者召喚に、身体が、魂が震える。
恐怖ではない。
異世界召喚は夏樹にとってトラウマであるが、今はそんな感情は引っ込んでいる。
今の夏樹を支配するのは、怒りだ。
「……新たな神だかなんだか知らないが、俺をこんな目に遭わせたツケは絶対に払わせてやる」
同時に、自らの正体を隠し続けていた「神」に悔しながら賞賛したくなる。
まさか新たな神々に「異世界召喚と異世界転生」を司る神がいるなんて思ってもいなかった。
門の神ならば、世界を移動できるのかと勝手な解釈をしていた。
油断はしていなかった。
戦えば勝てる相手だった。
しかし、戦わせてもらえないとは思わなかった。
「ま、素直に負けを認めよう。第一ラウンドはそっちの勝ちでいい。だけど、俺は死んでいない。なら、勝負はまだ終わっていない」
夏樹は祭壇から降りる。
聖剣を肩に置き、この場にいる人間たちを見る。
「あの、勇者様」
「俺を勇者と呼ぶな」
「し、失礼しました」
ブレイバーズ王国のような、悪意や企みは感じない。
信用など微塵もできないが、もしかしたら困った上で召喚をしたのかもしれない。
そこに召喚されてしまったのが、夏樹だ。
「で、では、お名前をお聞きしても?」
「――俺は、由良夏樹。河童さんの守護聖人にしてギャラクシー河童勇者!」
「あ、あの、それはどのような勇者様なのでしょうか?」
夏樹はにこりと笑顔を浮かべると、少女の首に聖剣を当てた。
「俺を元の場所に戻すか、死ぬか、どちらかを選んでってことだよ」