作品タイトル不明
71「たまに知ったかぶりして頷いている奴いなくね?」
「え? 誰、誰? なんで学生服着ているの!?」
「……気になるのはそこじゃないでしょうが!」
杏の疑問にガープが突っ込んだ。
「久しいな、アポローン」
「やあ、アマイモン」
アマイモンはおもむろに振り返り、青年――アポローンに挨拶をする。
アポローンも軽く手を挙げ、挨拶を返す。
「戦いの前に水を差してすまないが、アテーナーを迎えにきた」
「お兄様! 私は帰りません!」
「……遅い反抗期は構わないが、やっていることと相手が悪い。由良夏樹に喧嘩を売るな。彼は利用価値がある」
「反抗期ではありません!」
「……彼氏が欲しいなら、天界の戦士でもなんでもよりどりみどりだぞ」
「お兄様……私は屈強な男は好みではないのです。すらーっとした草食系がいいんです」
「……この世界にいるのか?」
「いませんでした」
「……よし、帰るぞ。お前の求める男子はこの世界にいない。むしろ、日本にいるだろう」
「お待ちください!」
アテーナーの好みの男子は、この世界では難しい。
そもそもアテーナー自身が、異世界人を性根が腐っているので嫌だと言っている。
ならば、異世界に固執する必要はない。
「出会いだけを目的にしているわけではありません! 私は、新しい私になりたいのです!」
「聞こう」
「アテーナーとして古くから信仰されていることは嬉しくあります。しかし、私も個として生きたいのです」
「……他の神々のように好き勝手やればいいではないか。なぜわざわざ絶望の神などというくだらぬ神に汲みする必要があった? おい、その発想はなかったという顔をするな」
ぽかん、とするアテーナーにアポローンは呆れた顔をする。
「やれやれ。お前は堅い。もっと柔軟に生きろ」
「……それができればやっています」
「だろうな。まあ、なんだ、このまま帰るという選択はしないのだな?」
「はい。ぜっくんの味方になるつもりはもうありませんが、杏の行末、アマイモンとガープが由良夏樹と決着をつけるのを見届けようと思います」
「……わかった。お前が生き残るのであれば、とりなしてもらえるよう頼んでおこう。そこの娘も、だ」
「お兄様、なぜ、そこまでしてくださるのでしょうか?」
「可愛い妹と別れの時間が迫っているからな」
「――っ、まさか!」
「俺も「あれ」に加わるのさ。他の力ある神も同じだ。面倒くさいことになったものだ」
「……なんてことを」
杏はアテーナーとアポローンの会話の意味がまるでわからない。
しかし、兄が妹に会いに来たことだけはわかった。
「アポローンよ」
「なんだ、アマイモン」
「あなたのような神でも勝てぬか?」
「勝てないね。そもそもあのような面倒くさい奴と戦うつもりはない」
「代わりに戦ってやりたい」
「無理だ、やめておけ。命を粗末にするな、「あれ」は神でも魔族でもない」
「そう言われると戦いたくなるが……きっと心踊らないのだろうな」
「違いない。アマイモン、お前は由良夏樹と全力で戦うといいさ。そして、知るといい」
アポローンは、アテーナーの頭を撫でで唇を釣り上げた。
「――人間が一番強く、怖い」
そう言い残しアポローンは踵を返す。
ひらひらと手を振り、歩いていく。
「アマイモン、生きていたらまた会おう。時間があれば、ボクシングの相手にくらいしてやる」
「楽しみだ」
「じゃあな」
「さらば」
挨拶を交わし、アポローンは消えた。
「ねえ、ガープさん」
「なんだ?」
「杏、話がよくわからないんだけど」
「……俺もわかっている顔をしているだけで、よくわからん!」
「ガープさん!?」