作品タイトル不明
70「戦いが始まるんじゃね?」③
「ぜーっ、ぜっぜっぜっぜっぜ! さすが勇者なっちゃん! 絶望的に対応が早い!」
「……さすがに簡単に攻撃が通るわけがないか」
絶望の神ぜっくんは、同じく新たな神々である青年とともに戦場に立っていた。
「なっちゃんから素敵なラブレターをもらって、絶望的に興奮したぞ! ここで動かなければ、ぜっくんじゃない!」
「意味がわからねえ」
「はははは、幸運の! 絶望的に不可解な顔をしないでくれたまえ! さあさあ、絶望的に殺戮をしよう! なっちゃんは鏖殺と言っているようだが、こちらは殺戮だ! 絶望をこの世界に広めようではない、か!」
ぜっくんの背後には、ブレイバーズ王国の兵士たちがいる。
他にも、新たな神々。
ぜっくんたちに着いた神、天使、魔族、悪魔たち。
「結局、勇者はふたりになっちまったな。どちらも癖があるから困る」
「ぜっぜっぜ、幸運の! そう言ってくれな! 杏くんは魔神の愛剣の適合者であり、明日香くんはよくわかんない力を手に入れている! どちらも絶望的に一騎当千さ!」
「俺は俺の仕事をするだけだ」
「任せる、ぞ! 君でなければ、なっちゃんに対応できない!」
「ふん。まさか俺の力が対人攻撃として使われるとは思わなかったぞ。しかし、面白い発想だ」
「ぜーっぜっぜっぜっぜっぜ!」
楽しそうに最前線に立つぜっくんと青年の少し後ろでは、松島明日香が眠たそうにあくびをしている。
夜間の内に移動したこともあり、睡眠時間が足りなかったようだ。
兵士、騎士たちは魔族と戦うことが不服そうだ。
なぜ、自分が、という顔をしている。
この場に王はおらず、生き残っている王族もいない。
あくまでもぜっくんが兵を動かしているだけだ。
兵に不満があるのだろう。
だが、そんなことは気にしない。
どうせ逆らえないのだ。
逃げ出しても追わないが、逃げたところで行き場ない。
「哀れな兵士よ、絶望的に絶望しながら死なないように絶望的に戦うといい!」
「嫌な奴だな、お前は!」
「ぜーっぜっぜっぜっぜっぜ!」
ぜっくんが高笑いをしていると、風が舞った。
濃密な血と死の匂いがする。
視界の中で、何かが光った。
「――やあ! ギャラクシー河童勇者の由良夏樹くんだよ!」
ぜっくんの胸が裂け、鮮血が吹き出した。