作品タイトル不明
67「お前が悪いんじゃね?」④
「私は、ずっと王に協力をしていた。王の狂気に勝てない、王にはなれないとわからされた。もう人間も魔族も知ったことではないと逃げ出そうとして……」
「自分もやられた、と」
「……そうだ」
「自業自得じゃね?」
「わかっている。だが、よかった」
「なにが?」
マルティンは夏樹に縋るような目を向けた。
「私を殺してくれ」
「自分で死ねよ」
「死ねない。何度も死のうとした。だが、できない。身体が回復してしまうのだ」
「再生能力か」
「そうだ。君のように強い力で消し飛ばしてもらわないと、私は死ねないのだ」
「ふーん。じゃあ、苦しんで生き続ければ?」
「――っ」
夏樹としては、恨みしかないマルティンを楽にしてやる義理はない。
生きている方が辛いのなら、ずっと生きて苦しんでほしい。
「……なっちゃん」
ガネーシャが、責めているわけではないが、もう少し言いようが、と言いたそうな顔をしていた。
「はいはい、わかりましたー。あんたは情報も吐いたから特別サービスで殺してやるよ」
「……ありがとう」
夏樹は常闇の剣を握りしめ、上段に構えた。
「サービスついでだ。言い残すことはある?」
「ブレイバーズ王国を滅ぼしてくれ」
「――喜んで!」
高めた魔力を全て魔剣に注ぎ、躊躇なく真っ直ぐに振り下ろす。
常闇の剣がマルティンを唐竹割りにすると、彼の肉体を消し飛ばす。
その余波で、夏樹たちがいる小屋を、小さな集落をついでとばかりに吹き飛ばしてしまった。
「――ふう」
「……なっちゃん。ガネたん的には、そこまで力入れなくてもよかったんじゃないかなーって思うんだぜぇ」
「そうかな?」
「そうだぜぇ。周り見てみ?」
「ん? ――あ」
周囲を見渡すと、小屋だけではなく集落が綺麗に吹き飛んでいる。
死者こそ出ていないようだが、全員が倒れていて動かない。
「……周りのことなーんにも考えてなかった!」
「さすがなっちゃんだぜ!」
「照れるなぁ」
夏樹はアイテムボックスから魔族たちの間で使われている金貨の入った袋をその場に置くと、ガネたんと顔を見合わせて全力で逃げた。
■
「――ほう。マルティンが死んだか」
「お父様?」
ブレイバーズ王国王宮にて、サイラス・ブレスコット国王は、第三王女のジョスリン・ブレスコットの研究室で、マルティンの死を察した。
「なんでもない。それよりも、また研究は失敗したようだな」
「ごめんなさい」
「……責めているわけではない。お前はよくやってくれている」
ジョスリンは、「趣味」で魔族を解剖しているが、それは魔族を「知りたい」からである。
好奇心の塊であるジョスリンは、魔族のように強く、長生きする種族を知りたかった。
彼女にとって、魔族がモンスターだろうと人間だろうとどうでもいいのだ。自分の欲を満たしてくれるなら、なんでもいい。
「あの、お父様……もう在庫がないの」
「……そうだったな。お前の興味を引く個体は奴隷の中にもいない。だが、安心していいぞ。これからブレイバーズ王国は本格的に魔族を潰すことになった。絶望の神をはじめ、勇者がいる。たくさんの魔族が手に入るぞ」
「やったー!」
喜ぶジョスリンの頭を優しく撫でる。
「ジョスリンの研究には期待している。私を強くし、美しく、不老にしてくれるだろう!」
「うん! お父様を最高の王様にしてあげるね!」