作品タイトル不明
66「お前が悪いんじゃね?」③
「まもんの神だって!?」
「……なっちゃん、違う。門の神ね。ま、いらないから。ま、余計だから」
「門の神か! 紛らわしいな! 偉大なまもんまもんを語る神かと思ったじゃねえか!」
「マモンは神じゃないからね? 魔族だからね?」
夏樹のボケに、ガネーシャが律儀に突っ込んでくれた。
マルティンだけは意味がわからず目を白黒させている。
「話し続けて、どうぞ?」
「あ、はい。門の神は、正確には違う名前らしいのだが、私にわかりやすい名で名乗ってくれた」
「ふむふむ。つまり別の名前があると」
「そうらしいが、そこは大きな問題ではなかった。彼は、門の神であり、召喚を使えると言う。長い時間、話をしたが、きっと君には興味がないと思うので省く」
「いいね、そういうのは大事だよ」
「……聞いた方がいい気がするのはガネたんだけかねぇ」
「私は彼に願った。別世界に行きたいと。しかし、駄目と言われた。交渉を重ね、せめて召喚術式を教えて欲しいと願った」
「なるほど、それで勇者召喚術式か」
マルティンが首肯する。
夏樹はガネたんに確認を取る。
「新たな神々だよね?」
「この世界の現状を見ると、おそらくそうだなぁ」
「面倒な奴らだ。全員打首にして首を晒してやる」
「……こわっ。なっちゃんこわっ!」
どうして新たな神々は余計なことしかしないのか、と頭痛を覚える。
「んで、マルティンティンはその術式をドヤ顔をして提出したってことでオーケー?」
「……そうだ」
「それで、伝説のギャラクシー河童勇者に至る前の勇者夏樹くんを呼んだんだね。うんうん。で、なんで逃亡中なの?」
勇者召喚の原因は理解した。
神や魔族が人間に知識を与えることはあると聞く。
だが、召喚された人間にしたら、余計なことをしてくれたとしか思わない。
「……あの国はおかしい」
「そんなことは知ってるよ」
「違う! 勇者よ! 君が戦いに暮れている間に、少しずつ王がおかしくなった」
「……王ってあまり覚えてないんだよねぇ。たまに声をかけてきた、まあまあ馴れ馴れしいおっさんって感じだったけど」
「そうではない! 王は、君が魔王と相打ちとなったと知ると同時に、第二の君を作ろうとした!」
「呼ぼうとしたんじゃなくて?」
「それはできない。勇者召喚にはあまりにも多くの魔力が必要だ。君を召喚するのに、再起不能となった魔法使い、死んだ奴隷は山のようだ」
「言っておくけど、悪いのはお前だからね?」
「誰も君が悪いとは言っていない! そうじゃない! 違うのだ! 勇者召喚魔術はおいそれと使えない! 王もわかっていたのだ! だからこそ、禁術に手を出したのだ!」
「なぁにそれ?」
「――人体改造」
「え? それって、ベル――」
「なっちゃん! それ以上はやべえぜぇ!」
「おっと、失礼。つい、少年心がまもんまもんしてしまいました」
「まもんまもんなら仕方がないぜぇ」
こほん、と咳払いして夏樹は仕切り直す。
「続けて」
「……人間にはない魔族の力を得ようとしたのだ。魔族はモンスターと認識しているブレイバーズ王国では、まさに異端!」
「そんな奴らいたかなぁ?」
「君が魔王と戦ったあとの話さ。だが、失敗した。無駄に命を散らすだけ。そんな時、絶望の神を名乗る男が現れた」
「そこでぜっくんかぁ。まったく、碌なことしないなぁ!」
「あの男は悪魔だ! なによりも、あの男が連れてきた少女が恐ろしい! 絶望の神と禁術によって、少女は異形となった。正直に言っておく、勇者よ――君よりも怖い」
夏樹よりも強いではなかった。
マルティンは、夏樹よりも「怖い」と言った。
「へぇ」
「私は、自分が狂っていると思っていた。召喚術式を使い、争いを助長し、魔族も人間も潰し合せ、私が王になろうとしていた! だが! だが、あの王は違う! 私など比べ物にならないほど、狂っている!」
「それで逃げてきたの?」
「それもある。これを、見てくれ」
マルティンは上着をめくった。
「…………」
「……おいおい」
夏樹とガネーシャが言葉を失う。
「私も改造された。ハーフではない、別のなにかに変えられてしまった」
マルティンの腹部には、大きな口が蠢いていた。