作品タイトル不明
62「絶望的に動き出すんじゃね?」
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
ブレイバーズ王国の一室で、ひとりの男性が両目を押さえて絶叫をあげていた。
カーペットに血溜まりを作り、身体を何度も跳ねさせている。
「――盗撮の神? ど、どうしたんだ!? 絶望的にびくんびくんしているではない、か!」
盗撮の神――と、ぜっくんに呼ばれた男はしばらくして動かなくなった。
ぜっくんは彼にそっと触れると、息を呑んだ。
「――絶望的に死んでいる!」
「そりゃ死ぬだろ」
ぜっくんが驚いていると、青年が呆れた声を出す。
長身痩躯。黒髪と銀髪の髪。オッドアイのイケメンという属性盛りだくさんの青年だ。
「希望の! 盗撮の神が死んでしまった! 絶望的に悲しい!」
「……俺を希望と言うな」
「そう言うな! 君は希望を与えている素敵な神なのだから!」
「……うぜぇ。それよりも、そこの神だけどな」
「そうだった! 我が友……というわけでは特になく、いつの間にか仲間に加わっていた盗撮の神が絶望的に死んでしまった! 名探偵ぜっくんの出番かもしれな、いっ!」
「……いや、普通に由良夏樹にやられただろ。そいつ、よせ、っていったのに覗き見していやがったから気づかれたんだろうさ」
「あれほど関わるなと言ったのに、絶望的に残念だ!」
盗撮の神は、力は大したことはない。
しかし、覗き見ることにかけてぜっくんの仲間の中で群を抜いている。
「まあ、盗撮の神に覗くなっていうのも酷な話だ」
「絶望的に同感だ。しかし、そろそろぜっくん的には由良夏樹を――いいや、なっちゃんをなんとかしたいと思うのだがね、ね!」
「言いなおすなよ。由良夏樹もお前にフレンドリーに呼ばれたくないだろうに」
「彼は絶望的に照れ屋さんなのさ!」
「殺されちまえ」
「ぜっぜっぜっ、希望の! 君も絶望的にツンデレさんだね!」
「希望」と呼ばれた青年は、心底鬱陶しいと顔を歪める。
神として生きた時間は、ぜっくんのほうが長い。
力もぜっくんのほうが上だ。
しかし、青年には他の神が持たない唯一の力がある。
「そろそろって言うのはこっちが言いたい。いつまで人間で遊んでいるつもりだ?」
「絶望的に心外だ! 明日香くんもサイラス国王くんも、絶望的に相性がよかったから、ついお友達になってしまったのだよ!」
「……その割には綾川杏は放っておくんだ?」
「ぜっぜっぜっぜ! 彼女とは絶望的に相性がいいのだがね! アマイモンくんが守っているので、あまり関われないの、さ!」
「最近はアテーナーもお前の影響下から抜け出しているな」
「それも絶望的にアマイモンくんのせいだね!」
ぜっくんは公言していないが、周囲の者をゆるやかに絶望するように思考誘導する能力がある。いや、能力ではなく、性質というべきか。
相手が神だろうと、魔族だろうと、勇者だろうと関係ない。
しかし、例外もいる。
由良夏樹、松島明日香、アマイモン、そして青年だ。
「個人的には、アマイモンくんも絶望的に気に入っているのだが、ね! 彼はなっちゃんと殺し合ってもらうためにスカウトしたも同然!」
「やることが狡っからいんだよ、お前は」
「ぜーっぜっぜっぜっぜ!」
ぜっくんは笑う。
心から楽しそうだ。
青年は肩をすくめた。
「ま、気持ちはわかるよ。地球じゃここまでやりたい放題できないもんな」
「是是是!」
「この世界を管理している魔神だかが、まさか人間に殺されているなんて、なんて俺たちに都合がいい」
「私たちが絶望的に幸運なのか、由良夏樹やこの世界が絶望的に不幸なのか!」
「それは最後にわかるさ。ほら、お前の実験ももう終わるんだろ? 俺はもう飽きてきたからな」
「ぜーっぜっぜっぜ! 承知した! 絶望的に、次のプランに進めよう!」
「そうこなくちゃな」
「由良夏樹と愉快な仲間たちを絶望的に――潰そう!」