作品タイトル不明
60「敵の連絡先がほしいんじゃね?」①
夏樹は聖剣さんを片手に鼻歌を歌いながら森を歩いていた。
ご機嫌というわけではない。
むしろ、機嫌というなら悪いほうだ。
どいつもこいつも面倒臭いことばかりする。
全員一度にくればいいのに、と思う。
そうすれば、一度に全員斬り捨てるのに。
「なんで微妙な顔して鼻歌歌ってんのよ」
「微妙な顔って……仕様です」
「そういう話をしているんじゃなくて、ちゃっちゃと殺しちゃえばいいじゃない」
「そっちか。これが全員が全員一度に襲いかかってくるのなら斬り殺すんだけど、どうも相手さんは暇みたいで手間をかけたいらしいんだよ」
アマイモンとガープはぜっくんとブレイバーズ王国と関係なく独自で動いていると聞く。
アテーナーは一応ぜっくんサイドだが、名前はあまり聞かないので動きがわからない。
綾川杏はガープたちと一緒にいるようで、松島明日香はぜっくん側だ。
「なーんで一致団結して戦おうって思わないのかな? 魔王さんだけでも人間だけじゃ倒せなかったのに、俺もいるんだぜ?」
「私もいるわよ」
「だよね。つーか、ぜっくんだって俺に殺されかけたのに、戦力集中して殺しに来ないとか――俺、笑っちゃうよ」
またはぜっくんは先日の夏樹との戦いは全力ではなく、本気出せば勝てると思っているのかもしれない。
それはそれでいい。
夏樹も本気ではなかったし、この世界に来て力を使える幅が広がった。
――なによりも、この世界がどうなろうと知ったことではないので、遠慮なく戦える。
森を抜ける。
夕日が眩しく目を細める。
「――やあ」
「――こんにちは」
まるで友人にでもあったように夏樹は気軽に手をあげる。
相手も、同じだった。
「――聖剣さんの勇者由良夏樹だ」
「――新たな神々の一柱絶叫の神です」
茶色いスーツを着た、二十代半ばの青年だった。
柔らかな微笑を浮かべる、温和そうな青年だ。
「なら叫べよ」
「名乗ると絶対に言われるんですよね、それ」
「でしょうね」
「あはははは。私は神としては下の下。ぜっくんに仕える下級の神であります」
「あんなのに仕えているのか、かわいそう」
「ですよね。とはいえ、私は絶望を叫んだ人間の感情から生まれた神ですので」
夏樹は聖剣さんを握りしめた。
絶叫の神は神力を集め光の剣を生み出した。
「さっきのよくわかんない神はさておき、あんたは俺の間合いがわかってるんだな?」
「もちろんです。奴は……どの神か忘れました。なにせ異世界を支配しようと血気盛んな神や魔が多いんですよ」
「そっちも大変だな。んで、あんたが俺の間合いの中にいるのも理解しているな?」
「はい」
「そっか。あんたツイてるよ。俺はね、問答無用に敵を殺すバーサーカーじゃないんだ」
聖剣さんが「え?」と驚いた声を出した気がした。
「わかります。あなたの瞳には深い理性を感じます」
再び聖剣さんが「え?」と驚いた声を出した気がした。
「あんたはぜっくんへの伝言係にする」
「私はあなたを殺すつもりできたのですがね。あと、密偵の天使たちもです」
「頑張ってもあんたじゃ俺には勝てないよ」
「かもしれませんが、私はこれでも武闘派でしてね。あなたのような強者と戦えることに喜びを感じているのです!」
絶叫の神が地面を蹴り夏樹に肉薄する。
迎え撃つ夏樹と共に、同時に剣を振るう。
「俺が勝ったらあんたは俺の伝言係だ」
「私が負けたら喜んで」
魔力と神力が、稲妻と光がぶつかった。