作品タイトル不明
59「もうちょっと頑張ってほしくね?」②
「ば、馬鹿な……これだけ悪いことをしたのに」
「全否定だと」
「信じられません!」
吉田たちは、地面に膝をつき驚きを禁じ得ないようだった。
むしろ、夏樹はそんな吉田たちに驚くしかない。
なぜその程度のことで堕天しようと思ったのか。
金田に至っては悪行ではなく善行だ。
「エロ本見ただけで堕天するなら、全国の中学生が堕天するわ!」
「ば、馬鹿な!」
「いや、マジでマジマジ。ていうか、吉田さんたちが偵察していた奴だって十分に堕天案件だろう!」
「天使と人間は違うのだよ」
「そうそう、人間は堕天しないだろ!」
「私たちも二十年ほど前に人間の悪に倣って改造制服身につけて学校に通ったことはあるのですが……気づいたら生徒会長になっていました」
「懐かしいなぁ」
「元気かなぁ、青山や由良は」
「季節の便りとお中元とお歳暮だけしか付き合いがありませんものね。天使と関わるのはよしとしないので……元気にしていればいいのですが」
しみじみしている吉田たち。
聞いているだけで、堕天には向かないし、仮に堕天できたとしてもその後の生活が予想できなかった。
「懐かしい話はまたにしよう。それよりも、帰還方法だ」
「ゴッドの力に相乗りさせてもらえるのなら、ここにいてもいいじゃねえか?」
「そうですね。ブレイバーズ王国は人間もおかしくなっています。あのままいるのは危険ですね」
「待って待って、ブレイバーズ王国の人間がおかしいってどいうこと!? あのおかしい奴らがもっとおかしくなったの!?」
「君の言うブレイバーズ王国民がどのようだったか僕たちにはわからないが、なにかおかしいなんだよ」
「そうそう! なんつーか、魔族と戦いだっていうのにまるで人ごとなんだぜ」
「王宮では魔族を迎え撃つ準備をしているのに、街ではまるでいつも通りです。よほど国の兵力に自信があるのか」
「俺がいたときはなーんにも気にしていないってことはなかったかなぁ。でも、人ごとだったね。税金払ってるんだから、戦って死ねって兵士に言ってたし。その兵士は戦わないで俺に丸投げだったけどね!」
ブレイバーズ王国民が変でも変でなくてもいいや、と夏樹は切り替える。
「魔王さん、河童さんを保護してそろそろ戻ろう。あまりこういうことを言いたくないんだけど、面倒臭い敵もいるし、嫌な予感もする」
「……そうだな。そろそろ戻り、ブレイバーズ王国と決着をつけよう」
「――って、順調にさせるわけにはいかないんですよね!」
空から声が響いた。
刹那、声の主が上半身と下半身が別れ、血と臓物を撒き散らして地面に落ちる。
「普通に近づいてきたのわかるから。俺の間合いに入って調子こけると思うな」
声高々に登場した何者かは夏樹の一閃によって両断され、絶命した。
「吉田さんたちつけられていたね」
「……すまない」
「まさか……俺たちの正体がバレるとは」
「普段は存在感を極力消していたのですが、申し訳ありません」
吉田たちが謝罪すると、河童の集落のある森の外にひとり誰かがいた。
夏樹の間合いから外れた場所に立っている。
先ほどの誰かを送り込んだのは、こいつだろう。
「小梅ちゃん、銀子さん、ギーゼラさん。みんなで河童さんを保護して魔王城に戻って」
「夏樹はどうするんじゃ?」
夏樹は笑顔で応じた。
「――口封じ!」