作品タイトル不明
間話「絶望的なアドバイスじゃね?」⑥
茨木童子が出ていってすぐ、松島明日香は何事もなかったようににこにこ笑っていた。
「茨木童子さん、いっちゃったー! ざーんねん!」
「ぜぜぜ……明日香くんは絶望的にタフだ、ね! 茨木童子にあそこまでされたら普通は絶望的に死んでしまうのに……本当にヒューマン?」
「やだなぁ、ぜっくんまで! こんなに可愛い私が化け物なわけないじゃん!」
「ぜーっぜっぜっぜっぜ! その通りだ、ね! おっと、この部屋は崩れるかもしれない。絶望的にこの部屋から退避しようではない、か!」
「そうだねー。でもさ」
廊下に出て歩きだした明日香は不満そうに頬を膨らませていた。
「茨木童子さんって、せっかく私が友達になってあげようって思ったのに、殴ったりするなんてひどいよねぇ」
「明日香くんが絶望的に煽ったせいの気がするけど……ぜっくんは賢いから口にしないのだよ!」
「言ってるよ! 言っちゃってるよ!」
「おっと! ぜっくんは絶望的に思ったことをそのまま口にしてしまう悪癖があるから仕方がない!」
「仕方がないかー!」
「ぜーっぜっぜっぜっぜ!」
笑いながらぜっくんと明日香は茨木童子が暴れた区画から離れた。
次の瞬間、音を立てて三人がさきほどまでいた部屋がある場所が崩れていく。
「あらら」
「ぜぜぜ」
悲鳴が聞こえるが、知ったことではない。
明日香もぜっくんもこの世界の人間がどうなろうと、どうしようと毛ほど興味がないのだから。
「でもさー、茨木童子さんってむかつくよねー! せっかくさー、私がお誘いまでしてあげたのに!」
「恋する乙女に明日香くんのお誘いは絶望的に刺激が強いのさ」
「そっかなぁ。うーん、イライラするなぁ。私って、馬鹿にした子ってだいたいやり返してきたんだよね。私ってかわいいじゃん。だから女子に僻まれるんだよねー。男女のくせにって、その男女に好きな男子取られてキレるって意味わかんない! 私だって、お願いされるから相手してあげていただけなのにー」
「あ、うん。ぜっくんは青春時代なかったから絶望的に悲しくなる」
「だからさ、そういうひどいこと言う女子にはね、ちゃーんと復讐したんだ。知らずに夏樹が邪魔することが大半だったけど、一番むかつく奴は二度と学校にくることができないようにしておいたんだよ」
「それは絶望的だね!」
「でしょでしょ! だからさー。茨木童子さんも泣かしたいなぁ。裸で土下座させて、泣かせてさ、その上で茨木童子さんの好きな人をぐっちゃぐっちゃにしたいなぁ」
「ぜーっぜっぜっぜっぜっぜ! なんと絶望的な! あの茨木童子くんにそこまで考えるなんて、絶望的に明日香くんくらいだ、よ!」
「でしょー?」
明日香は笑う。
ぜっくんも笑う。
ふたりの笑い声が廊下に木霊する。
しばらく笑い続けたぜっくんであったが、ふと足を止めた。
「どうしたの、ぜっくん?」
「もしかして、茨木童子くんへの善意から明日香くんを紹介したのだが、絶望的に人選ミスだったのではないか、な!?」