作品タイトル不明
55「知り合いの天使じゃね?」②
「――さすが、小梅ちゃんの恋人……強い、がくっ」
「やるじゃねえか、楽しかった、ぜ……がく」
「見事なお力でした、素晴らしい……がく」
戦いはあっという間に終わった。
(…………この天使たちなにも本気じゃなかったんですけど。つい勢い余ってぶっ飛ばしちゃった)
(あのさ、なんか伝えようとしてなかった? 戦うフリをして情報を渡しに来たんじゃない?)
(あー)
(気にしなくていいのよ。わかりづらい登場をしたこいつらが悪いのよ。なんだっけ? 吉山、山々、金山だっけ?)
(聖剣さん、微妙に違うよ! 吉田、山田、金田だよ!)
(どうでもいいわ! もしかしたら敵の目があるから言えないことがあるかもしれないんだけど、夏樹って結界はったりでき……ないわよね)
(ちょ、聖剣さん! 俺を完全パワータイプみたいに!)
(え? できるの?)
(できないですけどぉ!)
(できないんじゃない!)
(聖剣さんだってできないじゃない!)
(私に何を求めてるのよ!)
夏樹と聖剣さんが、他のみんなには聞こえない声でやりとりをしながら、周囲に気を配る。
ふたりの探れる範囲内には、敵と思われる者はいない。
空も、地下も同じだ。
少なくとも、名無しが守っていた河童の集落がある森に敵はいない。
(一応、敵はいないと思うけど、この天使さんたちみたいに急に来る奴らもいるから)
(ジジィに頼みなさいよ。かなりの使い手だったはずよ)
(そうなんだ?)
夏樹は師匠を伺った。
天使たちを最初から脅威と思っていなかったのか、地面に座りキセルを咥えている。
「師匠ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ほ?」
「なんでわざわざでかい声出すのよ! ちょっと、ジジィ! 結界張りなさいよ、確か得意でしょう?」
「ジジィ扱いが荒いのう。よくわからんが、まあ、ええじゃろう」
老人は指を鳴らすと、河童の集落が全て強固な結界に覆われた。
夏樹は唾を飲む。
まさかノーモーションでこれだけの結界を張ることができるとは思わなかった。
この結界を破ることはできるだろうが、相応の力が必要であるだろう。
「ありがとうございます! 師匠ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ほっほっほ、元気でよいことじゃ」
師匠に礼を言い、倒れた天使たちの前に立つ。
「なんで本気で戦わなかった? 小梅ちゃんと同等レベルの天使が三人がかりで瞬殺ってことはありえないでしょう?」
「くぉら! 夏樹ぃ! 俺様の方が三倍は強いんじゃが!」
「……まあ、そういうことにしておきましょう」
「ちょ、おどれぇ!」
「まあまあ、小梅さん。お話が進みませんので、ステイっす!」
自分のほうが強いと豪語する小梅を銀子が引きずって離れていく。
最初こそ、強い力を持つ天使の登場に緊張と警戒をしていた千手たちも、夏樹が瞬殺したことや、なにか事情があると察し、警戒こそ解かないが先ほどまでのように張り詰めた感じはなくなった。
「やれやれ」
「まったく」
「まいりましたね」
天使たちは立ち上がり、それぞれ土埃を払った。
「気を使ってもらってすみません」
「内緒話をしようとしたら思いの外強くてまいったぜ!」
「格好つけようとしたのですが、格好悪い姿を見せてしまったようですね」
吉田、山田、金田は聖剣で斬られ、夏樹に蹴り飛ばされたが、傷などは残っておらずピンピンしていた。
「これだけの結界を張ってくれたのなら、僕たちの声がぜっくんに届くことはないでしょう」
「つまり安心して話ができるってことだな!」
「ふう。役者ではないので演技は疲れました」
「で、あんたたちは何なの?」
夏樹の問いかけに、吉田が天使を代表して答えた。
「――僕たちは密偵です。新たな神々ぜっくんの下で情報を集めているんです」