作品タイトル不明
51「聖剣さんの過去じゃね?」④
名無しは地面に転がり未だびくんびくんと痙攣している夏樹を侮蔑を込めた目で睨んでいた。
「私はそんな気持ちの悪い子供に興味はないわ」
名無しの声が届いていない夏樹の代わりに女性たちが反論する。
「……言ってくれるじゃない! 男の子なんてちょっと気持ち悪いくらいでちょうどいいのよ!」
「そうじゃそうじゃ! こやつのパソコン見てみぃ! なかなかの趣味じゃぞ!」
「そうっす! そうっす! 気持ち悪い子に気持ち悪いって言ったらいけないんっすよ!」
実に酷い言われようだった。
誰ひとりとして「気持ち悪い」を否定してくれなかったのだから。
千手、東雲、ギーゼラ、は夏樹を哀れみ涙を浮かべ、そっと拭った。
「ブルマ履いている奴に気持ち悪いとかどうとか言われたくないんですけど」
「……いい歳して制服きているあんたもなかなか気持ち悪いわよ」
「銀子よりマシじゃない!」
「ちょっと待ってくださいっす!」
名無しと聖剣さんの言葉の合間に、銀子が割って入った。
「なんかおかしくないっすか!? 私だけ被弾しているっすけど!? 個人的には、銀子ちゃんけっこうありじゃないっすかー! って、鏡の前で一回転しちゃってたんすけど!?」
「痛々しくて悲しいんじゃ!」
「鏡見て気づきなさいよ!」
「ひどいっす!」
銀子たちのやりとりを見ても、名無しは睨むのをやめない。
「なにを気に入らなくて睨んでいるのか知らないけど、別に私はあんたとひとつに戻らなくてもいいのよ」
「…………」
「今の私でも夏樹の力になることができているもの。私がいなくても、夏樹自身がとても強いの」
聖剣さんは自分の相棒を自慢する。
名無しは眼光をより鋭くする。
「この世界であんたが気に入る誰かが来るまで永遠に待っていればいいのよ、ついでに朽ち果ててしまいなさい」
「――この」
名無しが拘束されていなければ、再び戦いが始まっていただろう。
「まあ、焦りなさんなって」
このままでは険悪なまま話が終わってしまうことを危惧した千手が割ってはいる。
「聖剣の姐さんも、そんな喧嘩腰じゃ話が進まねぇ」
「そうりゃそうだけど」
「名無しの姉さんは、河童たちを守って守り神扱いされていたんだ。ってことは、今の聖剣の姉さんのように、暴れてどうこうしようなんて思ってもいないだろうよ」
「そうかしら、急に襲ってきたけど」
「……それはお前が私を忘れて好き勝手やっていたからよ」
「と、まあ、行き違いもあるんだ。お互いに歩み寄るっていうのはどうなのかねぇ?」
千手の説得に、聖剣さんが不満そうな顔をしながら、名無しをあらためて見る。
「いいわ。忘れていたのは謝るわ。だけど、あんただって私のように相棒を選んで好きにやることはできたはずじゃない?」
「お前のように心を許すような人間が来たことはない」
「あ、そ。それで、夏樹は気に入らないのよね」
「当たり前だ」
「河童守っていたのに?」
「河童とその子供がどんな関係がある? 河童を守っていたのは、あのような可愛らしい生物を守らないで、何を守るというのだ」
「……うん、まあ、それはわかるけど」
小梅が手を挙げる。
「質問なんじゃが」
「……なによ」
「どんな奴なら、おどれは相棒として受け入れるんじゃ?」
「もちろん、身長が一八〇センチ以上あって、足もすらっと長くて! 年齢は二十歳くらいがいいな! 私のことをお姫様のように扱ってくれる、黒髪男子がいいのよ!」
名無しの理想の男子像に、
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
小梅たちは沈黙した。