作品タイトル不明
50「聖剣さんの過去じゃね?」③
「おどれの過去凄すぎじゃろう! 俺様の故郷の学校でも、クラスメイトが文明滅ぼそうとして先生にめ、めっ、されたくらいがせいぜいじゃぞ!」
「いやいや、小梅さんのクラスメイトもやべーっすから!」
小梅は、あまりにもスケールの大きい聖剣さんの過去に、おどろきなぜか自分の同級生の逸話と比較していた。
無論、文明ひとつどうにかしようとしている時点で、スケールは大きい。
だが、星をいくつも破壊した聖剣さんの過去には勝てない。
「問題はそこじゃねーだろ! この話が事実なら、いや聖剣の姐さんの言葉を疑うわけじゃないんだが、スケールが大きすぎて……そうじゃなくてだな! 星を滅ぼす力を持つ力が由良に渡ったら」
「せやね。言いたくないんけど、夏樹くんに星を砕くことができる力が渡ったら――この世界滅びてしまうんやない?」
「魔王としてはぜひ阻止したいところだ」
千手、東雲、ギーゼラが夏樹を見る。
小梅と銀子も夏樹を見た。
聖剣さんも夏樹に視線を向ける。
一同の視線の先には、地面に倒れてびくんびくん、と痙攣している夏樹がいた。
「せ、聖剣さんの過去しゅごい! とってもギャラクシーでファンタジー! 男の子の厨二心をこれでもかってほど刺激して、はぁはぁ、く、黒歴史が、かつて授業中に時間を持て余して書いた設定が思い出しちゃうぅうううううううううう!」
なにやら琴線に触れたようで、夏樹は興奮気味に喜んでいた。
「うわぁ」
「きんもー」
「きもいっすね」
「……男の子だな」
「そうやね。男の子やね」
「わけがわからん」
それぞれが夏樹の言動にちょっと引いていた。
「ほっほっほ、よかったのう。お前さんの過去を知っても、仲間たちの態度は変わらぬ。お前さんを受け入れてくれる者はこんなにもいる」
「――ふんっ」
老人が微笑ましく、聖剣さんを見守る笑みを深めた。
千手が彼に問う。
「こんなことを聞くのも野暮なんだが」
「なにかのう?」
「世界を滅ぼされて聖剣の姉御と戦ったあんたには……その、憎しみとか恨みのような感情をまるで感じないんだが……いいのか?」
「ほっほっほ。わしがあの子と戦ったのは数千年前だからのう。恨みもなにも、遠い彼方よ」
「……スケールがでかすぎる」
数千年という時間を想像できない千手は頭痛を覚えたような顔をするが、老人は笑うだけ。
「だが、当時の記憶は鮮明じゃよ。わしがまだナウなヤングなころの話じゃ」
「……ナウなヤングって……」
「新卒で入った会社で、良くしてくれた上司が同期の女の子と不倫してのう。別れる別れないで包丁を持ち出して、お腹の中にあなたの子供がいるのよ! と、叫んだところで、世界がひっくり返ったんじゃよ」
聖剣さん襲撃時、老人は修羅場に巻き込まれていたらしい。
「さぞかし上司はホッとしただろうな!」
「ほっほっほ。なぜかわしが女の子に刺されてしまってのう。そこでまさかの力の覚醒じゃ。なんやかんやあって、生き残った者たちと復讐の戦いに身を投じたのじゃが……わしは星が砕けたことで覚醒したものではなく、上司の痴情のもつれに巻き込まれて力に覚醒した経緯があったので……なんとなく疎外感があったのう」
「……悲しいな、おい!」
老人の過去に、千手は泣きそうになった。
東雲が老人の肩に手を置く。
「こんど飲みにいきましょう」
「ほっほっほ。お気遣いに感謝する」
夏樹を鍛えた老人は元は一般人だった。
驚愕に値する。
「だが、生きていると不思議なことが起きるものじゃ。まさかこうして、あの子が本当の意味での相棒を見つけるとは思いもしなんだ。わしの役目もおわりじゃな」
「ちょっと待ちなさい。なにかいい話で終わろうとしているけれど、私はこの子供を相棒なんて認めないわ」
未だ拘束されている名無しが、反発を始めた。