作品タイトル不明
47「再会は突然にじゃね?」②
夏樹の師匠である老人が、刀身を夏樹から遠ざけて話した。
すると、名無しは再び夏樹に切り掛かる。
「元気なのはいいことじゃが、そこまで――」
指を二本立てて老人が名無しに向ける。
宙になにかを描くと、名無しの身体が大きく弾かれ大樹の下へ飛ばされた。
「こ、この」
「少し冷静になりなさい」
老人の静かな声が響くと、光の輪がいくつも生まれ名無しの身体を拘束した。
「さすが師匠! 素晴らしいです!」
「……夏樹のこのジジィに対する変な信頼と尊敬はなんなの?」
老人の手際の良さに拍手している夏樹に、聖剣さんが呆れた声を出した。
「っていうか、このクソジジィ! あんたの仕業ね!」
「聖剣さん?」
聖剣さんが思い出したように老人に掴み掛かる。
小梅たちが近づいてきて、「まあまあ」と止める。
「ちょっと離してよ! このジジィがそもそもの元凶じゃない!」
「どういうこと、聖剣さん?」
「どういうことじゃ!?」
「夏樹くんの師匠が元凶って、訳がわからないっすけど」
唸る聖剣さんに、夏樹たちが疑問符を浮かべる。
だが、わかるのは、聖剣さんも名無しも揃って老人に怒りのような感情を抱いているということだ。
「そうさのう」
老人は、近くにあった岩の上にゆっくり腰を下ろすと、懐からキセルを取り出し加えた。
「坊主……いや、由良夏樹、お主なら託すことができるかも知れぬとわしは希望を抱いているのじゃよ」
「師匠、なにを」
「であれば、事情を話さないというのは不誠実じゃな」
紫煙を吐き出しながら、老人が柔らかな表情を浮かべる。
しかし、待ったをかけたのは聖剣さんだった。
「こら、クソジジィ! あんたの事情を話すってことは、私の過去も夏樹に知られるってことじゃない!」
「ほっほっほ、そなたは最高の相棒を見つけたのだ。ならば、すべてを打ち明けて本当の意味で、相棒になるべきだと思うのだがのう」
「心の準備ぐらいさせてよ! 百年くらい!」
「人間にはあまりにも長すぎると思うんじゃがな」
苦笑する老人。
「ていうか、あんた! 私の記憶に干渉していたわね! どうして私があれを忘れていたのよ!」
「なにもしておらんよ」
「――え?」
「長らく寝ておったせいで忘れてしまっただけではないかのう?」
聖剣さんはゆっくり名無しを見た。
彼女は老人に続き、聖剣さんにまで明確な敵意を持って唸っている。
聖剣さんは名無しからそっと視線を逸らし、頷いた。
「誰にでも過ちはあるわ。実は、私もそろそろ夏樹にすべてを受け入れてもらうときだと思っていたのよ」
「……こやつもええ性格しとるのう」
「自分が、もうひとりの自分を素で忘れていたことを誤魔化すつもりっすよ」
「うっさい! 忘れていたんだからしょうがないじゃない!」
小梅と銀子が呆れた声を出した。
もう聖剣さんが抵抗しないようなので、彼女から腕を離す。
「えっと、聖剣さんの力は把握しているけど、過去は知らなかったね」
「そうね。あんたは聞かなかったものね」
「うん。聖剣さんが話したいときに話せばいいかなって」
「――きゅんっ!」
夏樹が微笑むと、聖剣さんが胸を押さえた。
「くぉら、なにをときめいとるんじゃ!」
「ときめき警察の出番っすか!?」
「あんたたち、さっきからやかましいのよ! しんみり話ができないじゃない!」
「する気もないじゃろうて!」
「私たちのせいにしないでほしいっす!」
ぎゃーぎゃー、騒ぐ聖剣さん、小梅、銀子の姿に頭痛を覚えたように、千手が割って入った。
「姐さん、魔王城にも戻らねえといけねんだ。話を進めようぜ」
「せやね。あ、円たちも呼んだ方がええんかな?」
「というか、魔王の私が勇者の聖剣の秘密を聞いてしまっていいのだろうか?」
東雲は全員に話を伝えるのか、ギーゼラは魔王という立場の者が話を聞いていいのか悩んでいる。
「別に大した話じゃないから、あとで伝えてくれればいいわよ。別に隠すことでもないし。魔王だって、好きになさい」
「ならば拝聴しよう」
「ふん」
聖剣さんがそっぽを向く。
見守っていた老人がキセルを鳴らして灰を落とす。
「では、話を始めるとしよう。まず、わしの立場を明かそう」
ごくり、と誰かが唾を飲み込んだ。
夏樹の師匠がどのような立場なのか、気にならない者はいない。
「わしは――看守じゃよ」
「え?」
「そこの力が悪用されぬように、そこの力が世界を滅ぼさぬように、見張る看守なのだよ」