作品タイトル不明
46「再会は突然にじゃね?」①
金属音が響いた。
「私が夏樹を傷つけさせるわけがないでしょう?」
「…………」
聖剣さんが聖剣を握り夏樹の防御に回った。
聖剣さん幼女バージョンは、無表情に戻り、距離を取った。
「…………あの、聖剣さん」
「なによ?」
「ドヤ顔のところ申し訳ないんですけど」
「だから、なによ!」
「ちゃんと防御できていませんでした。幼女バージョンさんの一撃、俺の脇腹を思いっきり斬ってます」
「――あ」
夏樹の制服の上着が切り裂かれ、脇腹から血が流れている。
深すぎるわけではないが、浅くもない。
聖剣さんが防御してくれたおかげで真っ二つは避けることができたが、一撃を完全に防ぐことはできなかったようだ。
「……よくもやってくれたわね!」
「防げなかったくせに、よく吠える」
「んだと!?」
聖剣を構えて突っ込もうとする聖剣さんの襟首を夏樹が掴んだ。
「――ぐえ」
「あ、ごめん」
「苦しいじゃない!」
「さーせん! でも、ほら、とりあえず、話をしよう。聖剣さん幼女バージョン……なんか言いづらいな。幼聖さん!」
「……微妙な名前つけないで」
「えっと、じゃあ、お名前は?」
「今の私に名前はない。呼びたければ、名無しと呼んで」
「うっす! 名無しさん!」
本人がそう望むのなら、夏樹はそれに応じよう。
後ろで銀子が「コミュ力たっか! めっちゃぐいぐいいきますっすね!」と感心しているが、今はそちらにリソースを割けない。
名無しから目を離すようなことをすれば、次は間違いなく胴体が二分割されることになるだろう。
「……馴れ馴れしい男ね。こんな子供のどこがいいの?」
「ふん。同じ私のくせにわからないなんてお子様ね。……あ、ごめんね。あんたも負けないくらいガキだもんね」
「……ふぅん」
「つーか、なにそのブルマ? 舐めてんの? 異世界で祀られている剣がなんで地球の日本の伝統衣装着てるの?」
「あの、聖剣さん。ブルマは別に伝統衣装じゃないと思うんですけど」
「そうなの?」
「そうなの」
「でも……祐介と銀子が」
「祐介くーん!? 銀子さーん!? 聖剣さんになに間違った知識を植え付けてるの!?」
祐介はこの場にいないが、元凶のひとりである銀子はいる。
夏樹が睨むと、銀子の隣で小梅が絶句していた。
「……ブルマが伝統衣装じゃない、じゃと?」
「小梅ちゃんまで!? 待って、ツッコミきれない!」
まさか小梅までブルマに関して誤った知識を持っているとは思わず、夏樹が突っ込んだ。
「馬鹿っ、夏樹! 集中を解いたら」
「あ」
突っ込みのせいで名無しから視線を外してしまった。
勢い任せの夏樹の、大きな失態だった。
「しま」
名無しに視線を戻そうとしたときには、彼女は眼前にいた。
「――今度こそ、死ね」
明確な殺意が籠められた言葉と共に剣を振るう。
聖剣さんが剣を盾にするが、砕かれ、夏樹の首に名無しの剣が吸い込まれるように近づく。
「ほっほっほ、そこまでじゃ」
しかし、夏樹の首に触れる前に老人の手が名無しの剣の刀身を掴んでいた。
「――し」
「このような状況になっているとは思わなんだ。だが、間に合ったようでよかった」
「師匠ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ほっほっほ」
夏樹の師であり、謎多き老人が音もなく現れ、危機を救ってくれた。