作品タイトル不明
間話「絶望的なアドバイスじゃね?」③
明日香の口から血が吐き出された。
血飛沫が、茨木童子の白い顔と着物を赤い斑点をつくる。
「穢らわしい」
汚物を触ったと言わんばかりに顔を顰めた茨木童子は、腹部から腕を引き抜いた。
明日香の身体が力なく傾く。
しかし、倒れない。
明日香の足に再び力が入り、踏みとどまる。
「……痛いじゃない」
ぐちゃぐちゃと音を立てて腹部の穴が塞がっていく。
「再生能力?」
「すごいでしょう! 天使さんとか神様をたくさん食べたら身体がすごくなったんだよ!」
「鬼も命を喰らうが、お前ほど意地汚くない」
茨木童子をはじめ鬼は、人間を、他の妖怪を食う。
だが、それは食事であり、力を得るための行為である。
古くから行われてきた、自然なことだ。
明日香の場合は違う。
快楽を優先し、結果的に能力で相手を吸収し、結果的に能力を得ているのだ。
茨木童子も鬼だ。
食うことに関し、美味いと感じるし、もっと食べたいという欲もある。
人が牛を食べるように、自分以外を食う。
しかし、不必要に食わない。食ったことはない。
力が必要だから食った。
その過程で、もし自分よりも強い相手と出会い、殺され、食われるなら受け入れただろう。
だが、明日香は違うと見ればわかる。
天使も人間も、神も、そして明日香自身もどのような理由で食べたのか、食べられたのか理解していないだろう。
――鬼である茨木童子にはそれが不愉快だった。
「茨木童子さんって、お堅い感じ? だから、好きな人に逃げられるんでしょう? どうせ手に入れようとしてあれよこれよと空回りして、失敗しちゃった感じ?」
「ちょ、絶望的な指摘をやめて!」
「――貴様」
「あれ? 当たっちゃった? だよねー。茨木童子さんって、そんな感じだもんね。自分が美人で、モテるからって、余裕なんでしょう? 強いからって、なんでも手に入ると思っているんでしょう? でも、失敗しちゃった! ださっ!」
「再生能力があっても殺せることを教えてやる」
「ほらー。ちょっと気に入らないすぐ暴力! すぐ恫喝! こわーい! きっとこんな姿を見たから、茨木童子さんの好きな人も幻滅したんだろうねー! それで? 反省とか後悔とかしていないくせいに、愛に生きるとか笑える! あはははははは! どうせ、茨木童子さんって、同じことするタイプじゃない?」
「ちょっと! なぜ絶望的に煽るの!? やめて、ぜっくんの企みが途中なのにお城壊れちゃう!」
ぜっくんは、明日香に茨木童子の情報を与えていない。
茨木童子が恋愛下手であることを見てきたので、良かれと思って明日香にアドバイスをお願いしたのだ。
――心からの善意で。
「きっとまた振られるんだろうねー! うわっ、楽しみに! 見てみたい!」
「……殺してやる。引き裂いて、ちぎって、撒き散らしてやる」
牙を剥き出しにし、怒りの形相を浮かべた茨木童子はまさに鬼だった。