作品タイトル不明
間話「絶望的なアドバイスじゃね?」②
椅子に座り、窓を眺めていた茨木童子はドヤ顔のぜっくんが連れてきた明日香を見て、目を細めた。
「……これを連れてきたことが私への協力?」
「ぜーぜっぜっぜっぜっぜっ! 明日香くんは、男女問わず絶望的に大人気なのだよ!」
「…………」
「いやー、大人気なんて、それほどでもあるかなぁ!」
「…………」
沈黙していた茨木童子の腕が消えたように動いた。
次の瞬間、ぜっくんが壁を突き破って転がっていく。
「うわ」
突然の出来事に明日香が目を丸くした。
だが、彼女にぜっくんへの心配などはない。
「絶望的に痛いのだが!」
さすがは神というべきか、人間ならば身体中がバラバラになっていただろう。
しかし、ぜっくんは「痛い」と言うだけで、平然としていた。
「よくも私の前に、こんな混ざり物を連れてこられたわね」
「おや。妖怪にも純血主義があるのかな? 昨今、純潔など絶望的にはやらないと思うのだが、ね!」
「……わかって言ってるでしょう? この女は、妖怪でも、神でも、天使でも、もちろん人間でもない」
「絶望的に些細な問題だと思うが!」
「強いも弱いも関係なく食い散らかした怪物に教わる愛はないわ」
茨木童子は心底侮蔑した目を明日香に向けた。
だが、すぐに興味ないとばかりに視線を外し、椅子に座り窓の外を眺めた。
彼女の言動に面白くない顔をしたのは、明日香だ。
「ちょっと、茨木童子さんだっけ? 好きな男に相手にされないかわいそうな子だっていうから、アドバイスしてあげようと思ったのに、ちょっと言い過ぎじゃない?」
明日香が文句を言うも、茨木童子は見向きもしない。
言葉さえ届いているのかどうか不明だ。
「あ、そう。せっかくこれからみんなで集まるからお誘いしてあげようと思ったのに。私を馬鹿にするのなら、死んじゃえ!」
虚空から剣を取り出した明日香は、ぜっくんが止める間もなく振るった。
魔力の塊が放たれ茨木童子に直撃する。
轟音が響き、壁が吹き飛んだ。
「モテない女の僻みってきらーい!」
すっきりした顔をした明日香だったが、表情が固まった。
「気がすんだ?」
そこには、傷ひとつ。否、汚れひとつついていない茨木童子がいた。
「貰い物の力、貰い物の剣、貰い物の能力で奪った力……しかも使いこなせていない。滑稽でしかないわ」
「……私が本気だったなんて思わないでよね」
両手で剣を握り明日香は正眼に構えた。
「鬼にもなれない混ざり物の化け物が、それほど死にたいのなら殺してやる」
茨木童子が言葉を吐き捨てると同時に、消えた。
瞬く間に肉薄した茨木童子の鋭い爪が、明日香の腹部を貫いた。