作品タイトル不明
間話「絶望的なアドバイスじゃね?」①
ブレイバーズ王国王宮。
「ぜーぜっぜっぜっぜっぜっぜっぜっ、ごほっげほっごほっ!?」
絶望の神ことぜっくんは、特徴のある声で笑い、咽せていた。
「なんの用?」
「相変わらず素っ気ない態度で絶望しそうだ!」
「……鬱陶しい男ね」
ぜっくんが訪れていたのは、王宮の一部屋。
ぼうっと窓の外を見ていた白ずくめの少女が顔を僅かにしかめて、透き通った声を出した。
「人間たちからクレーム、だっ! 兵士や使用人を殺しすぎだと、ね!」
「私からはなにもしていないわ。奴らが無遠慮に部屋の中に入って私に触れようとするから払い除けただよ」
「君の力で払い除けられてしまうと絶望的に人間はバラバラになるのだがね!?」
「それこそ、知らないわ」
「殺すたびに部屋を変えているのが絶望的に図々しい!」
「どうだっていいわ。そもそも私をこんな世界に連れてきたのは……お前だろう」
少女が睨むと同時に、押し潰さんばかりに力が放たれる。
力を持たない人間ならば、これだけでショックししていただろう。
「消滅しかけていた君を救ってあげたのに、なんという絶望的な塩対応! ぜっくんかなしい!」
「誰も助けてくれと頼んだ覚えはないわ。私はあのまま死んでもよかったのに」
「――そんな絶望的なことを言わないでくれたまえ――茨木童子」
ぜっくんは少女を――茨木童子と呼んだ。
この世界に、茨木童子はいない。
彼女は、夏樹と戦い死んだと思われた茨木童子本人だった。
「君の亡骸は回収できなかったが、神格を持つ君を復活させることは少々の骨は折れたが無事に成功した。しかし、私がこっそり与えた力と完全なる血統の血を取り込んだことで強化された力はすでに――ないっ!」
「別にどうでもいいわ」
「今の君は、せいぜい酒呑童子よりもちょっと弱いくらいだ」
「言っておくけど、酒呑童子は上から数えた方が早いくらいには強いのよ」
「絶望的に知っているさ!」
現在の茨木童子は弱体化している。
それでも強いのだ。
彼女がぜっくんサイドに立ち、魔族と、いや、由良夏樹たちと戦ってくれるのであれば強力な味方となること間違いないのだが、その気はないようだ。
「絶望的に個人的な質問なのだがっ?」
「……なに?」
「茨木童子、君は毎日外を眺めて何を思う?」
「……お前が日本に戻してくれるのを待っているだけよ」
「我々に協力してくれるのであれば、絶望的に時間が短縮されるのだが?」
「くだらない。私には神話も異世界も知ったことではないの。助けてくれと頼んでいないけど、拾った命を有効活用したいのよ」
「ほう。つまり?」
「私はもう選択を間違えない。今度は、ちゃんと、愛に生きるわ」
「なんと絶望的な!」
「……言ってくれるわね。私じゃ無理だと言うわけ?」
「ま、待ちたまえ! 絶望的は私の口癖だから! ぜ、絶望的に誤解されている!」
ぜっくんは部屋の隅まで逃げると、慌てて弁明する。
「茨木童子、君は愛に生きるというのなら、愛を知るべきだ! 私が絶望的に協力しよう!」
「……どうやって?」
「絶望的にしばし待ちたまえ!」
――数分後。
「こんにちはー! 勇者として異世界に召喚された、松島明日香でーす!」