作品タイトル不明
45「強化イベントの始まりじゃね?」②
「まさか幼女モードの聖剣さんを見ることができるなんて……へへ。長生きはするもんだね」
「ふざけんな!」
「へぶしっ! ありがとうございます!」
突然すぎる、聖剣さんの幼女バージョンにびっくりした夏樹がくだらないことを口走り、聖剣さんに引っ叩かれてしまう。
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう! もっと他に気になることがあるんじゃないの!」
「そうだよね」
夏樹は真剣に、大樹の下に立つ聖剣さん幼女バージョンを見る。
聖剣さんをそのまま幼くした少女は、結んでいない桃色の髪を風に揺らしてこちらを睨んでいる。
制服姿の聖剣さんに対し、聖剣さん幼女バージョンは体操服とブルマ、そしてハイソックスにスニーカーを履いていた。
「なんでブルマ?」
「そこじゃないで…………そうよね! なんか変だと思ったら、どうしてブルマ履いてんのよ!」
夏樹と聖剣さんは顔を見合わせるも、答えが出ない。
困った顔をして、小梅たちを見た。
「知るかボケぇ! こっち見んな!」
「夏樹くんの趣味が反映されているだけじゃないっすか?」
「俺も知らねえ」
「自分もや。ごめんね」
「……ふむ。見たことのない格好だが、運動がしやすそうだ」
残念ながら小梅たちはいつの間にか距離を置いている。
「ひどい! 本当にわからないのに! あと銀子さん! 俺にブルマ趣味はないよ!」
「そうっすね。申し訳ないっす」
「わかってくれるなら、それで」
「競泳水着派っすもんね」
「やめて! なっちゃんの趣味を急に暴露しないで! つーか、なんで知ってんだよぉおおおおおおおおおおおおおおお!」
夏樹は顔を覆って大絶叫した。
異世界に来てから、一番のダメージを受けたかもしれない。
「何言ってんの。あんたの趣味なんて、パソコンに全部入っているじゃない」
「聖剣さんまでご存じなの!? 俺の、俺の趣味が全て把握されている! やだー!」
泣きそうだった。
戦ってもいないのに、挫けそうになる。
河童の集落にきてから、心へのダメージが多い。
「気にすんな、由良! 健康的な趣味じゃねえか!」
「そうやで! 今度円に着せたるから、元気出しぃ!」
「励まさないで! そっちの方が辛い!」
夏樹は泣いた。
異世界でどれだけ辛いことがあっても泣かなかった夏樹だったが、泣いてしまった。
「……茶番は終わり?」
聖剣さん幼女バージョンが冷めた声を出した。
夏樹は涙を引っ込めて、視線を戻す。
彼女の瞳はとても冷たかった。
(……この子、睨んでいるのは俺じゃないのか)
冷静に視線を追うと、彼女の視線は夏樹の背後にいる聖剣さんに向けられていた。
「こんな子供を使い手にして……なにをするつもり?」
「はぁ? なにもしないわよ」
「言うつもりはないわけね。なら、いいわ」
少女の姿と古びた剣が消えた。
「――死ね」
夏樹に肉薄した少女は殺意を込めて剣を薙いだ。