作品タイトル不明
44「強化イベントの始まりじゃね?」①
「あれ? 小梅ちゃんたちがいない。聖剣さんもいないし。円ちゃんたちは河童さんたちのきゃっきゃうふふしてるし。……スターベアさん、タイガーさん、ベアさんはなんでしょんぼり体育座りしてるの?」
小梅たちを探していた夏樹は、元気なく並んで体育座りをしている鬼姉妹を見つけて声をかけた。
スマホのカメラ機能で激写している祐介は見ないことにする。
「……俺たちも河童と遊ぼうと思ったら、全力ダッシュで逃げられた」
「ひどい! あたいらが何したってんだ!」
「べあべあーべあっ!」
「熊童子なんて、うわー熊だーって鬼扱いさえしてもらえなかったんだぞ!」
「あー、うん」
河童たちにしてみたら、鬼はさぞかし怖いのだろう。
もともと日本に住んでいた河童ならば、酒呑童子の子供の鬼たちのことは知っているはずだ。
怯えてしまうのは仕方がないことだ。
「まあまあ、散々悪さしたツケだと思うよ」
「ふざけんな! 俺と虎童子だけならわかるが、熊童子はなにもしてねえじゃねえか! 木の実食べて、はちみつ舐めてるだけの無害なんだぞ!」
「……リアル熊さんだからなぁ」
夏樹たちにとって、熊童子は可愛いマスコット扱いだが、知らぬ者が見たら巨体の熊でしかない。
夏樹だって彼女が心優しい熊さんだと知らなければ全力ダッシュで逃げるだろう。
「じゃあ、これでも食べて元気出して」
スナック菓子とゴミ袋を渡す。
「酒は?」
「だーめー!」
「ちっ」
さすがに昼間から酒を飲ませるわけにはいかない。
「人間ぶっ潰したら酒盛りってことでよろしく」
「わかったよ! あ、飴とかグミとか甘いものもくれよ」
「いいけど?」
「河童のガキどもをこれで餌付けしてやるぜ」
「……食べちゃダメだよ?」
「食べねえよ! 河童を捕食しねえから!」
「ならいいけど」
星熊童子に甘味をいくつか渡した。
「ところで、小梅ちゃんたちはどこにいるか知ってる?」
「あん? なんか聖剣のやつが向こうに連れて行ったぞ」
「なんだろ?」
「さあな」
「ありがとう。行ってみるよ」
「おうよ!」
鬼姉妹たちに手を振って、集落から少し離れた場所に向かって歩いていると、巨木を見つけた。
「――あれ?」
なぜ今まで気づかなかったのか、と思うほど大きな木だ。
何百年という時間を経た、歴史を感じさせる大木だった。
「どことなく力を感じるのは気のせいかな? あ、小梅ちゃん! 銀子さん! 聖剣さん! ギーゼラさん! しののんと千手さんも!」
探し人を見つけて小走りで駆け寄る。
「どうしたの、みんな?」
「――夏樹」
聖剣さんが神妙な顔をしてこちらに顔を向けた。
「何かあった?」
「あれ」
「どれ? ……うん?」
聖剣さんが指を差す場所を見ると、大樹の付け根に先ほど遅いかかかってきた古びた剣があった。
「うわぁ。なんで重要文化財みたいに祀られてるの?」
「――あの剣は、私よ」
「聖剣さん、なにを」
「夏樹、聖剣、来るんじゃ!」
夏樹は、聖剣さんの言葉の意味がわからず問いかけようとすると、小梅が鋭い声を出す。
反射的に、全員が身構えた。
同時に、青い雷が古びた剣から走り、意志を持ったように夏樹たちに襲いかかった。
「おっと」
夏樹は手で弾き、小梅と銀子は紙一重で避けた。
東雲が符を一枚取り出し結界を張り、千手とギーゼラの壁となる。
「いきなりご挨拶だな」
「気をつけなさい。あの剣は私よ。私と同じだけの力があると思いなさい」
いつの間にか夏樹の背中に移動していた聖剣さんが忠告する。
「――つまり、ゲームで言うところの、聖剣さんが真なる力を取り戻して俺がめちゃくちゃパワーアップするイベントってことでオーケーですか!?」
「さすが現代っ子! 話が早いわ!」
「なるほどなるほど。河童さんの集落に導かれたのは、このイベントを乗り越えるためか。いいぜ、俺がギャラクシー河童勇者から進化してギャラクシー河童勇者アルティメットになる時間だ!」
夏樹が指を鳴らして、獰猛な笑みを浮かべる。
すると、大木の下。古びた剣のすぐ横に、幼い少女が現れた。
年齢は十歳ほどだ。
髪は結んでいないが、聖剣さんが幼くなればきっと彼女のようになるだろうとすぐにわかった。
「わーい! 幼女な聖剣さんだー!」