作品タイトル不明
33「キャラが被るのは問題じゃね?」
夏樹は身構えた。
河童さんは守り神と言い信頼しているようだが、森の中にいる何か――おそらく剣が、凄まじい速度で森の中を移動しているのが感じる。
魔力もそうだが、早い。
木々を縫い、意志を持っているように移動している。
「――夏樹」
「うん。来る」
聖剣さんが現れ、消える。
夏樹が聖剣を構えた刹那、雷を纏った剣が鋭い速さで真っ直ぐ向かってきた。
夏樹は咄嗟に千手を突き飛ばす。
勢いがついてしまったが、千手の身体を虎童子が受け止めてくれた。
「ギャラクシーえ」
技名を言うよりも早く剣が夏樹を貫かんとした。
余裕をなくした夏樹が全力で剣を振り下ろす。
火花が散り、魔力の衝撃波が生まれ小梅たちを吹き飛ばす。
「ぐぬぬぬぬぬぬ」
ぎちぎちっ、と嫌な音を立てて聖剣と剣が力比べをする。
今までどのような相手でも斬ってきた聖剣が、魔力抜きとはいえ全力で振り下ろしてきれなかったことは初めてだ。
「固いっ、まるで河童さんのお皿のようだ!」
「……僕たちのお皿はこんなに頑丈じゃないかっぱー」
地面に倒れていた河童さんがツッコミを入れてくれるが、喜ぶ余裕がない。
少しでも力を抜けば、剣は夏樹を貫くだろう。
「なんていうか、まるで聖剣さんを相手にしているような感じがするんですけど! これ、どういうこと!? 双子!?」
「私に姉妹なんていないわよ!」
「ですよね! じゃあ、従姉妹!?」
「そんなわけないでしょう!」
力は拮抗している。
不思議と、夏樹が力を出せば出すほど、相手も力を出してくる予感がした。
だが、嫌な気配はない。
「勇者ぱーんち!」
夏樹は思い切り剣を蹴り飛ばした。
くるくる回転しながら剣が宙を舞う。
だが、すぐに宙に停滞し、紫電を撒き散らす。
「……あ、もしかして怒らせちゃったかも」
「とにかくぶった斬るのよ! 私とキャラが被ってるから、退場させなさい!」
「うっす!」
聖剣さんの命を受けて、夏樹は身体強化をした。
師匠によって器が広げられたことにより、身体の隅々にまで魔力が浸透する感覚がある。
今までと違う、心地よさを感じながら、聖剣を真っ直ぐ構えた。
「ギャラクシーまもんまもんエクスプロージョンクライマックスフォーエバー!」
夏樹の魔力、聖剣さんの力が溶け合いひとつとなる。
対抗するように剣が紫電を撒き散らし、唸るような音を立てて夏樹に向かった。
瞬く間に剣が夏樹の間合いに入る。
速度は先ほどよりも速いが、この度はきちんと捉えた。
「――河童勇者斬り」
勢いだけの技名をきちんと言い放ち、満足して聖剣を振り下ろす。
金属と金属がぶつかり合う甲高い音と火花が散ると同時に、剣は弾き飛ばされて森の中に飛んでいく。
木々を薙ぎ倒し、繰り返し地面に穴を開け、遠くに落ちた。