作品タイトル不明
32「厨二病は誰もが通る道なんじゃね?」②
夏樹は顔を抑えて、涙目になった。
「痛いよ、痛いよ! なにするの千手さん!」
「俺は厨二病じゃねえよ! 魔眼持ちに言っちゃいけねえ一番の言葉言いやがったな!」
「あ、そうだった。千手さんって魔眼持ちだったね。てっきり」
「てっきり!? 俺の魔眼の活躍見たことあるだろ! 由良には効かなかったが、それでも活躍しただろ!?」
千手の訴えに、彼が魔眼持ちであることを夏樹は思い出した。
思い返せば、千手の魔眼は敵を「止めてしまう」悪どいものだ。とはいえ、夏樹には効いたことはないので、忘れていた。
「俺は魔眼使いの霊能力者だからな! 気さくなツッコミ担当のお兄さんじゃねえんだよ! わかったか、ああ!?」
「わかりました! わかりました! わかったから、マジギレしないで! こわい!」
「お前がキレさせてんだよ!」
一発殴っただけでは怒りが収まらないようで、千手は夏樹をヘッドロックする。
「ちょ、らめぇ!」
「うっせぇ! しばらくこのままだ! んで、真面目に森を視ろ!」
千手に言われて森を改めて視る。
一見すると森であることはかわらないが、「何か」がいる。
――ある、ではない。いる、のだ。
「ん?」
「お」
ふたりが森を見ていると、何かが走った。
鋭い閃光であり、瞬く間の光だった。
瞬きをした刹那の出来事であったが、凄まじい魔力を感じ取った。
「……視えたか?」
「うん。視えた」
千手は視ることはできたようだが、魔力を感じなかったようだ。
夏樹にとって一瞬だけ、いたずらに針を刺されたような本当にわずかな出来事だった。
だが、間違いない。
凄まじい魔力を、それこそ夏樹と同等かそれ以上の魔力を持つ「何か」がいる。
(まずいな。恐ろしく早くて、魔力もやばい。敵意は感じないけど、この何かがこっちに向かってきたら対処できるかどうか怪しい)
夏樹が不安を覚えるほどの力が「何か」にはあった。
「安心していいかっぱー。なっちゃんたちが見たのは、守り神様なんだかっぱー」
河童さんの言葉に、夏樹たちが疑問符を浮かべた。
「守り神ってなんなん?」
河童さんに尋ねたのは円だった。
「守り神様は、僕たちがこの世界にきてしまったときからまもってくれていたかっぱー」
「神様おるんか……知らんかった」
「違うかっぱー。僕たちが守り神様と勝手に崇めているだけかっぱー。でも、間違いなく、僕たちのことを守ってくれているかっぱー」
「そうなんやね。その守り神様ってどんなん方なん?」
円の疑問に、河童さんは笑顔を浮かべた。
「――雷を宿す剣だかっぱー!」