作品タイトル不明
間話「魔法少女も大変じゃね?」②
「――っ、なんでこんなところに一般人が!? 早く逃げて! そしてこんな私を見ないで! 見ていたらお願いだから忘れて!」
佐渡ひなたは、目の前の魔法少女――と思われる三十路の女性が半泣きで懇願している姿を見て、いろいろ察し、スマホを取り出しカメラ機能を立ち上げて連写した。
「ちょ、待って、やめて! 撮らないで! 私のこんな姿を撮らないでぇ!」
魔法少女――田中くれないの懇願を無視して、ひなたはとにかく連写する。
「やーめーてー! 最近の子、怖い! なんで無言で、無表情で写真撮るの!? も、もしかして、SNSにアップなんて……」
「そんなことしませんよ」
ひなたの言葉に、くれないがあからさまにホッとする。
さすがに彼女の痛々しい格好をSNSにアップするような非道なことはしない。
「安心してください」
ひなたは地面に力無く座るくれないに近づくと、満面の笑みを浮かべて彼女の肩に手を置いた。
「――ひ」
なぜか怯えた声を出されたが気にしない。
今は取引の時間だ。
「私は佐渡ひなたです」
「田中、くれない、です」
「くれないさん……覚えました。さて、取引をしましょう」
「ふぇ?」
「私はあなたの秘密を握りました。どのような理由があって魔法少女、いえ、魔法熟女をしているのか不明ですが」
「熟女って言いなおさないで! 魔法少女でお願いします!」
「……魔法少女をしているのか疑問はありますが、それはいいのです」
「そ、そうなの? SNSにアップして辱めない?」
「そんなことしません。してほしいのなら、しますが?」
「やめてください! せっかく今まで誰にもバレずにいたのに、この歳になって、もう限界を超えてから世間に存在がバレちゃったら――立ち直れないの!」
ひなたは、少しくれないを哀れに思った。
しかし、情けは不要だ。
この二度と訪れないであろうチャンスを活かすためなら、彼女の心が折れても構わない。
ひなたは心を鬼にした。
「私の要望はひとつ」
「な、なにかな?」
「私をモンスターにしてください」
「なぜ!?」
「無理ですか?」
「無理に決まっているでしょう! その制服、中学生だよね? どうしたら中学生の女の子がモンスター志望なの!?」
「愛する人のためです」
「なおさら意味がわからないよ!? そんなに可愛いのに!」
「……ありがとうございます。なんだか照れますね」
「ほら、照れた顔も可愛いじゃない! だからね、モンスターになりたいなんて言っちゃダメだよ?」
きっとくれないはいい人なのだろう。
見られたくない魔法少女の姿を見られ、写真を撮られているというのにひなたの願望を止めてくれている。
しかし、ひなたも恋する少女として止まれないのだ。
「でも、大好きなお兄ちゃんがモンスターのような人外しか恋愛対象ではないので私はモンスターになるしかないのです」
「まさかのお兄ちゃん!? そして、あなたのお兄ちゃん、こわっ! 人の趣味嗜好をどうこう言いたくないけど、こわっ!」