作品タイトル不明
28「ネットもある意味ファンタジーじゃね?」②
「はーい、こんにちはー! 俺はギャラクシー河童勇者なっちゃんです! 今日から異世界系動画配信者としてガンガン投稿していこうと思います! では早速! ――第一弾! 無慈悲にモンスターさんを八つ裂きにしてみた!」
「やめんかいっ!」
スマホを構えて自撮りしていた夏樹は、背後から小梅に踵落としをきめられて頭を抱えて蹲った。
「おどれはさっきSNSに異世界なうとか投稿しようとして俺様たちにぶっ飛ばされたのを忘れたんか!? なんで呟きがだめじゃというんに、動画ならよいと思うんか説明してほしいんじゃが!?」
「ひどいよ小梅ちゃん。中学生なんだもん、ちょっとくらいハメ外したっていいじゃない!」
「いつでもどこでもハメ外してばかりじゃろうて!?」
宝物庫から河童を連れて中庭に戻った夏樹たち一行は、それぞれスマホを触っていた。
河童さんはまだ本調子ではないようで、夏樹がアイテムボックスから取り出した新鮮な野菜とミネラルウォーターをもらうと、お礼を言ってテントで休んでいる。
少々ミイラでいた時間が長すぎたようだ。
夏樹たちは魔王待ちなので、思い思いの時間を過ごしているのだが、ゴッドによってネットが開通したおかげでみんなスマホを離さない。
「……スマホ依存って怖いんじゃのう。子供は目が悪くなったり、ストレートネックになってしまうようじゃし、腱鞘炎なんかも現代病らしいんじゃぞ。画面ばかり見とらんで、もっと広い世界を見ようとは思わんのか」
「小梅ちゃんが急におばちゃんみたいなことを」
「だーれがおばちゃんじゃい! 紀元前生まれで悪かったんじゃ!」
「へぶしっ」
スマホを見てばかりの一同に、やれやれ、と肩をすくめた小梅を見て失言してしまった夏樹は、ありがたい頭突きをいただいた。
そういう小梅も先ほどまでスマホばかり触っていた。
「SNSに異世界なんぞ晒したら、大炎上じゃろうて!」
「へーきへーき! 頭のかわいそうな子扱いで終わりだって」
「逆に聞くんじゃが、おどれはそれでええんか!?」
「……嫌だなぁ」
「じゃろう!? なんでやろうと思ったんじゃ!?」
「炎上なんて怖くない! だって俺は勇者なんだから!」
「いや、キリってされても反応に困るんじゃが。ときめくくらいしかできんぞ!」
「――ときめいちゃえよ」
「――え、やだ急に」
これでもかと表情を引き締め、声をイケボにした夏樹に小梅が不意打ちめいてときめく。
「うっさいのよ!」
そんな夏樹の側頭部に、現れた聖剣さんが回転回し蹴りを叩き込んだ。
「じゅらっぷっ」
夏樹は変な声を上げながら、一回転反して頭から地面に崩れ落ちた。
「ていうか、動画もSNSもやったらダメってゴッドに言われてたじゃない? 炎上がどうこうじゃなくて、まず根本からダメでしょう?」
「……ゴッドそんなこと言ってたっけ?」
「言ってたんじゃがな!? 俺様も散々言ったじゃろう!」
夏樹たちは異世界に数日いるが、再び帰還するときには同じ日に戻ってくることができる。
詳細は不明だが、ゴッドによる「調整」が理由らしい。
その「調整」が狂うので、知人への連絡。もちろん、神々や魔族にもしてはいけない。
SNSに投稿しても駄目、動画配信も同様だ。
あくまでも繋がったネットを「見る」ことだけが許されているのだ。
それでも、みんなは大満足だ。
こちらで数日過ごしても、家族に心配かけなくてもいいので、連絡しなくても良い。
若干の寂しさはあるかもしれないが、そこは我慢しよう。
「見てみぃ! ある意味、うちの一番のトラブルメーカーの銀子でさえ――おい、くぉら! なんでエルフにリヴァ子ちゃんねる見せとるんじゃ!? 布教か!? いつからおどれはリヴァ子推しに……男の娘すきじゃもんな、なんか、すまん」
「ちょ、やめてくれませんか! たまたま動画見ていただけっす! フェイリスさんがちょっと興味あるようだから見せてただけっす!」
銀子のスマホを握りしめて動画を凝視するフェイリスは、
「え、うそ? 魔族がこんな可愛い服きて下ネタ喋るだけでちやほやされてお金ももらえるの?」
地球の魔族の存在に大きく困惑していた。