作品タイトル不明
26「カップラーメンって最高じゃね?」②
「な、なんて神々しい光なんだ!」
宝物庫を包むほどの光量に、夏樹は目を開けていられない。
それでもすべきことはわかっている。
河童に向かいひれ伏した。
「なぜじゃ!?」
小梅が突っ込むも夏樹はぴくりとも動かず、声だけで返事をする。
「河童さんが復活されたときに、頭が高いでしょうが!」
「こちとら大天使の小梅様じゃぞ! 俺様のほうが偉いんじゃ!」
小梅に同調するのは、星熊童子、虎童子、熊童子だ。
「そうだそうだ! 俺たちは鬼の中でも格上の鬼だぞ!」
「あたいらのほうが、こんな世界の河童よりも格上だ!」
「べあべあべあ!」
酒呑童子の娘たちであり、京都の鬼の頂点にいた星熊童子たち。
茨木童子の強さに隠れがちだったが、彼女たちも相当強く、格として河童よりも上かもしれない。
しかし、そんな言葉は夏樹の耳には届かなかった。
「え? なになに? どういうこと!?」
状況がまるでわからないフェイリスが目を白黒させている。
「来るで!」
東雲が、河童のミイラの変化を敏感に感じ取り身構えた。
そして、
「――死ぬかと思ったかっぱー!」
三頭身ほどのかわいらしい河童が光の中から現れた。
「…………いやいやいや! なんでじゃ!? パチモンよろしく禍々しい感じの河童のミイラさんがなんでデフォルメされた可愛らしい河童さんになっとるんじゃ!?」
「落ち着いてくださいっす、小梅さん! 向島市の河童もこんな感じじゃないっすか!」
「そうじゃけども! 水分仕事しすぎじゃろう!」
小梅のツッコミと銀子のフォローが響く中、他の面々は驚き固まっていた。
まさか乾物のように水で復活するとは思っていなかったのだ。
水をかけた義政でさえ、この展開には驚きが隠せないらしい。
「……ここはどこかっぱー?」
きょろきょろあたりを見渡す河童は、少し不安そうだった。
誰が声をかけるべきか、と一同が悩んだとき、夏樹がゆっくり顔を上げていた。
「ここは魔王城です」
「……かっぱー!? もしや、僕は囚われちゃったんでカッパー?」
「そこの悪いエルフが、干からびた河童さんを攫ってきてしまったのです!」
「ちょっと、攫ったなんて人聞きの悪いことを! 拾ったって言ったじゃないですか!」
フェイリスが抗議するが、夏樹は無視して河童の言葉を待った。
「……やっぱり、ここは日本じゃないかっぱー?」
「――っ、日本をご存知で!?」
「もちろんかっぱー。僕たちは、日本という国でのんびり暮らしていたかっぱー」
「し、しかし、なぜ、そんな河童さんたちがこのような世界に?」
「よくわからないかっぱー。数年前、突如として集落を眩い光が襲ったかっぱー。そして気づけば、この世界だったかっぱー」
「――なんという悲劇!」
夏樹は我がことのように悲しみ泣いていた。
なぜここまで感情移入できるのか小梅たちにはわからない。
魔族をはじめ人外大好きっ子の裕介も、夏樹の言動を見て冷静になっている。
「こっちの世界が日本と違うことは空気でわかっていたかっぱー。でも、川が近くにあって、野菜も育てられるから、新天地だとおもって頑張っていたかっぱー」
「そんな河童さんがなぜ干からびていたんですか?」
「モンスターの襲撃にあったかっぱー。僕たちの集落は雷の剣によって守られているカッパー。でも、ときどきモンスターが守りを抜けて集落まできてしまうときがあるかっぱー」
「……あの、今、なにか無視できない単語があった気が」
一登がそう呟くも、夏樹にはやっぱり届かない。
「モンスターども許せねぇ! この世界ごと駆逐してやる!」
「僕はこれでも集落では強い河童かっぱー。集落を守ろうと戦ったかっぱー。でも、霊力を使いすぎたせいで倒れてしまったかっぱー。干からびても雨が降れば復活すると思っていたかっぱー」
「……なのに雨が降る前にエルフさんたちが捕獲して宝物庫に入れたから、水に触れることなく復活もできなかったんですね。わかりました。――死刑!」
「待って待って待って! 知らないわよ! あと判断が早いから! 死刑って決めるのが早すぎるから!」
今にも剣を抜きそうな夏樹に、フェイリスが慌てて弁解する。
「ていうか、生きていたのならモンスターに食べられる可能性だってあったんだから! 私のしたことは、保護よ! 保護!」
「…………審議に入ります」
「こ、この勇者ムカつく! ずっと我慢していたけど、ムカつく!」
地団駄を踏むフェイリスに、河童がぺこり、と頭を下げた。
「そうだったかっぱー。助けてくれてありがとうかっぱー」
「……こちらも生存確認せずごめんなさい。まさかミイラが水で復活するなんて想像もできなかったわ」
河童とフェイリスが握手を交わす。
夏樹は感動して泣いた。
河童は夏樹たちにも頭をさげる。
「僕のこと助けてくれてありがとうラッパー!」
「――今、こやつラッパーって言ったんじゃが!?」