軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25「カップラーメンって最高じゃね?」①

「……そういうの求めてないんで」

きりっ、とした顔をしたフェイリスから河童のミイラを奪った夏樹は、優しく抱きしめた。

「干物にされて宝物庫に入れられて……かわいそうに。まるで見せ物にされて辱めをうけたんだろうね」

アイテムボックスに入れるような真似はしない。

河童さんは物ではないのだ。

一枚の毛布を取り出し、床に広げると、そっと河童のミイラを横たえる。

「――敵は取ります。河童大神様の名にかけて!」

常闇の剣を抜き、夏樹は静かに、しかし、低い声で言った。

「――こんな世界滅ぼしてやる」

「夏樹がダークサイドに落ちちゃったんじゃが!?」

「だーから、そっと宝物庫の奥にしまっておきましょうって言ったじゃないっすか!」

「そこのエルフが股開いて離さんかったんが悪いんじゃ!」

夏樹が「聖剣の勇者」から「悲しみの勇者」に転職している間に、小梅と銀子は責任を押し付けった。

「まずは、魔族さんから責任をとってもらう。次に、人間だ。ははははは! 河童さんに優しくない世界は滅んでしまえばいいんだ!」

「あかん! なっちゃんが完璧にダークサイドに走ってしまったんやけど!」

「誰がこんなことで勇者がダークサイドに落ちるって思うよ!」

円と千手が悲鳴をあげている中、フェイリスだけがよくわかっていない顔をして困惑している。

「えっと、どうしてそのモンスターのミイラにそんな感情移入しているのよ! 勇者が泣くところなんて初めて見たわ!」

「エルフさん、余計なこといっちゃらめぇ!」

祐介が慌ててフェイリスの口を塞ごうとすると、さらに彼女は爆弾発言を続けた。

「というか、そのミイラは私たちエルフが献上した物じゃない!」

――宝物庫に沈黙が走った。

「思い出したぞ。そういえば……そうだったな。確かに、エルフたちが珍しいからって魔王様にもってきたんだった」

ソーニャも河童のミイラの存在を思い出したようだ。

しかし、夏樹にとっては聞き逃せない話が増えただけだ。

「ほう。つまり、魔王さんは河童さんの敵、と?」

「ああああああああ! もう会話をすればするほど面倒になるんじゃぁあああああああ!」

「フェイリスさん! どうやって、この河童さんを手に入れたのか白状してほしいっす! まさか、手にかけたとかっすか!? その場合は、復讐の勇者によってこの世界が破滅エンドっすけど!?」

「どういうことよ!? それ、知ってるの!?」

「今、それ、って言った?」

「ええいっ、黙っとれ! もうちょっとでええから黙っとれ!」

まだフェイリスが河童さんをミイラにしたとは決まっていない。

小梅たちとしても冤罪で世界が滅ぼされてしまうのは見過ごせなかった。

「さっきからなんなのよ! 珍しいモンスターの亡骸を拾ったから、薬かなにかに使えないかと思っただけよ! 見たこともないモンスターに興味を持ってもいいでしょう!」

「…………エルフさんが殺したわけじゃないの?」

「襲われてもいないのに殺したりしないわ!」

夏樹はフェイリスをじっと見つめた。

彼女はたじろいだが、目線を逸らすことはしなかった。

夏樹は常闇の剣をしまう。

一同は、大きな息を吐く。

少なくとも、異世界破滅だけは免れたようだ。

「提案なのですが、ここは試しに水をかけてみましょう。ほら、あるではないですか、お皿に水をかけたら復活するって」

義政少年の提案に、小梅たちは「それだ!」と口々に言ったが、夏樹だけは悲しげに首を振る。

「義政先生、そんな乾物じゃないんですから」

「ものは試しですよ。失礼しますね」

「ちょ」

夏樹が止める間もなく義政は手にしていたやかんを河童のミイラのお皿に向けた。

じょばじょばと音を立てて水がかけられていく。

義政はついでとばかりに全身に水をかけていった。

「義政先生、気持ちは嬉しいですが……いくら河童さんが偉大な妖怪であってもさすがにそんな簡単に復活など」

「別に河童は偉大な妖怪じゃねえよ!?」

星熊童子が抗議するが、夏樹は無視した。

「せめて、故郷である日本に連れて帰り、きゅうり畑に――」

夏樹が目を伏せ、そこまで言った時だった。

――河童のミイラから霊力が発せられ、緑色に発光した。