作品タイトル不明
24「ーーありえないんじゃね?」③
「無自覚に魔力を出してごめんなさい!」
聖剣に何度も引っ叩かれて両頬をぱんぱんにした夏樹は、みんなの前で土下座していた。
夏樹本人も無自覚にとはいえ、魔力をなにも考えずに放出したことは反省していた。
「……謝らんでええ。というか、そのぱんぱんになった顔をどうにかせんかい! 笑いしか出てこんのじゃが!」
小梅をはじめ、みんなが口々に「気にしていない」と声をかけてくれたので、夏樹は顔をヒールをかけて顔を元に戻すと真面目な顔をした。
「――ごめんね、みんな。それで、河童さんのミイラに関してなんだけど」
「そうじゃった! 気をしっかり持つんじゃぞ!」
「待って、その言い方ってまさか……」
小梅の案ずる声に、夏樹が震えると、銀子がそっと肩に手を置いた。
「……見ればわかるっす」
「――っ」
銀子は夏樹に同情する目を向けていた。
夏樹の脳裏に最悪の展開が広がり、目眩がした。
「なっちゃん!」
円が慌てて支えてくれる。
「ありがとう、円ちゃん」
「いいんよ。それよりも、ちゃんとし?」
「うん」
夏樹は奥歯を噛み締めて足に力を入れた。
「現場は水無月姉妹が見張ってくれているっす」
「あの姉妹は幸いじゃったな。夏樹の魔力に当てられたら、じょばー、じゃったぞ」
じょばー、がなにを意味するのか理解して、夏樹は聞こえないふりをした。
「とにかく宝物庫へ移動しましょうっす!」
銀子の言葉に夏樹たちが頷く。
小梅たちの誘導で宝物庫に辿り着くと、入り口を守るように水無月姉妹が立っていた。
彼女たちは夏樹に気づくと、それぞれ気遣うように声をかけてくれた。
「夏樹くん……残念」
「ショックかもしれませんが……まずは確認を」
恐る恐る宝物庫に足を踏み入れると、
「――っ」
夏樹は目を疑った。
目の前には、酔っ払っていびきをかくエルフの族長フェイリスが大股開きで眠っていた。
スカートの中が丸見えだが、そんなことは気にならない。
問題なのは、彼女がまるで抱き枕よろしく抱き抱えている存在だった。
「あ、ああ、そんな」
夏樹にはわかった。
干からび、茶色く変色している「それ」は河童のミイラであると。
魚の干物でももう少し水分があるだろうと思うほど、カラッカラだ。
不意に涙が流れた。
異世界を酷い世界だと思っていたが、ここまで酷いとは思わなかった。
「……河童さん」
夏樹がそっと河童のミイラに手を伸ばすと、フェイリスが目を開けた。
そして、夏樹を直視すると、みるみる赤くなり、
「わ、私の寝込みを襲うつもりか! いいだろう! いくら身体を汚されようと、誇り高きエルフの心まで奪えるとは思うなよ!」
河童のミイラを抱きしめ、盛大に勘違いをした。