作品タイトル不明
23「ーーありえないんじゃね?」②
小梅・ルシファーは父サタンと母リリスの間に生まれた天使だ。
その潜在能力は堕天し魔王となったサタンを超えるであろうとされるほど。
そんな小梅が、圧倒的な魔力によって立てず、その場に這いつくばっていた。
「――え? なんて?」
魔力の発生源は、由良夏樹だ。
異世界に召喚された勇者であり、人の身でありながら神々と戦うことができる規格外な存在である。
彼から発せられた魔力は、天使の小梅はもちろん、人間の銀子たちを平等に押しつぶした。
「――ごめん。よく聞こえなかった。河童さんがなんだって?」
まるで龍の逆鱗に触れた者のごとく、小梅たちは圧倒的な力によって動けない。
不幸中の幸いというべきか、中庭には夏樹の関係者しかいない。
無意識に力を抑えているのかもしれない。
だが、夏希の魔力による圧迫感は同じ勇者であるはずの佐渡祐介を押しつぶし、呼吸まで止めている。
「なにキレてんのよ!」
このまま夏樹が魔力を放出していると問題が起きるであろうと誰もが最悪のことを考えていたとき、夏樹の背後に現れた聖剣さんが頭を思い切り蹴り飛ばした。
刹那、魔力が掻き消え小梅たちが圧迫感から解放された。
「……あかんじゃろ……なんつー、力、じゃ」
「はぁっ、はっ、はぁっ……夏樹くんが今まで全力じゃなかったっていうのがわかったっす。そりゃ、この世界を一人で制圧できるはずっすよ」
息を切らせた小梅と銀子は、改めて夏樹の力を知った。
師匠である老人に器を拡張されたことも理由だろう。
少なくとも、地球で戦っていた時よりも夏樹の力は上がっているようだった。
「……参ったぜ。逆立ちしても勝てねえな」
咳払いしながら千手が落ちたサングラスを拾う。
「同じ勇者のはずなんだけど、力が違いすぎないかな!?」
「……さすが夏樹くんって言うべきかどうか悩むよね」
「あの男やべーですわ!」
祐介、一登、そして火輪の剣も夏樹の力に驚きを隠せずにいる。
「ははは、あかんわ。自分、それなりに自信あったんやけど、もうあかん。比べようがないほどの力の差や」
「……これを敵意と共に向けられる敵に心底同情するよ」
東雲も、円も冷や汗をかいている。
「一度、戦ったことがあるが、俺の力など届きもしなかったのが納得だった」
「……興味深いですね。夏樹さんの力の限界を知りたいものです」
征四郎と義政も汗をびっしょりかいている。
「……気持ちよく寝ていたら呼吸が止まった件!」
「――無呼吸症候群かと思ったぞ!」
「べあべあべあべあ!」
星熊童子、虎童子、熊童子は抗議の声をあげていた。
唯一、魔族でありこの場にいたダークエルフのソーニャは、
「…………」
失神していた。
そして、きっかけはさておき、魔力を考えなしに放出した夏樹は。
「あんたはなんでそうやって考えなしに!」
聖剣さんにビンタされまくっていた。