軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11「ときめきは突然にじゃね?」①

「興味を持つほど余裕がなかったっていうのもあるけどね。俺の話はいいよ。んで、サイモスだっけ?」

「サイラスだ。サイラス・ブレスコット」

「そいつは実際、どんな王様なの?」

夏樹の疑問に、ギーゼラはラーラとオズワルドと顔を見合わせ、少し悩む仕草をした。

しばらくして、ゆっくりと三人が口を開く。

「普通だ」

「普通だね」

「普通ですね」

「普通ってどういうこと!?」

一国の王の評価が「普通」であることは、興味深い。

「わかりやすく魔族蔑視の人間であることは前提として、俗物だな。言い方は悪いが、人間の国の王や貴族は自らの欲望を満たすことを優先する」

「それはどうなんだろうね!?」

「普通に駄目だろう。だが、人間たちにしてみれば、普通のことだ。だから、普通に俗っぽい王だ」

「えー。なんかすっげー強い力があるとか、王家に伝わる武器を持っているとか!」

「無いな」

「がっかり」

「というか、ブレイバーズ王国に関しては代々所有していた聖剣があったが触れることさえできず異世界から使い手を召喚した結果呼ばれたのが――」

「俺だった!」

基本、忘れていたが、聖剣さんはブレイバーズ王国が所有していた聖剣だ。

ただし、歴代で扱えた者がいないという宝の持ち腐れ状態だった。

そこで喚ばれたのが夏樹だった。

「言っておくけど、ブレイバーズ王国に所有されていたわけじゃないから」

会話の割って入ったのは、顕現した聖剣さんだ。

彼女は夏樹の背後から首を回し、頭に顎を乗せる。

「逆だからね」

「逆とは?」

「あたしが最初にそこにあったの。あたしの力を得ようとした奴らが全員黒焦げになって、なぜか挑戦者が増えちゃってね。えーっと、その中に、どこかの国で政治で敗北して一家浪党逃げ出した人間たちがいたのよ。それがブレイバーズ王国のはじまり」

「んんん?」

「笑っちゃうのが、歴代の王や王族って私を抜こうとしないのよ。触れたら死ぬってわかっているから。でも、あたしを抜いた者こそ勇者だなんて言い伝えが残っているらしくて、成人の儀や即位のタイミングで挑戦するのよね。絶対自分で触らずに、奴隷を使って抜こうとするんだけど……せめて自分でやれっての!」

「さすが異世界人! クズ過ぎて涙でそう! なっちゃん感激!」

異世界人が昔からちゃんと異世界人していて夏樹は感涙しそうだった。

ここまで一貫していると、ひとつの文化かもしれない。

「そのサイラスって王様が俗物なのはわかったよ。じゃあ、さくっと殺すか」

「あたしが許すわ! 細切れにしてやりなさい! あ、でもあたしは使わないでね! 汚れたくないから」

「うっす!」

夏樹と聖剣さんは、一国の王を殺すことを明日の天気でも話すかのように軽々と言う。

ギーゼラたちが、冷や汗をかいた。

一国の王を、それも魔族と長年敵対してきた国の王を殺すなど易々とできるものではない。

それができれば、少なくともブレイバーズ王国は滅びているのだ。

だが、夏樹ならばできる。

単身で魔王軍と戦い、魔王を倒し、魔神を殺した勇者ならば、ブレイバーズ王国という人間がふんぞり返っているだけの国など脅威では無い。

「ま、待て、夏樹よ。そんな簡単に」

「昨日から、割と後手後手だからそろそろこっちから攻めたほうがいいんじゃないかなって思うんだよ。なーに、心配しなくても、これから王宮に忍び込んでサクッと殺して愉快なオブジェに――」

「それは許さん」

「え?」

夏樹は魔族のためを思い行動しようとしたのだが、ギーゼラはそれを良しとしなかった。

ラーラとオズワルドも、その選択肢はないという顔をしている。

困惑する夏樹に、ギーゼラは真っ直ぐ瞳を向けて言った。

「お前がこの世界の人間にどのような扱いをされていたのかよくわかった。私の時もそうだったが、単身で敵陣に乗り込み王を殺すなど、それは暗殺者のすることだ。勇者のすることではない。協力者として、友として、我は由良夏樹を暗殺の道具として使わん!」

「え、やだ、ギーゼラさん――イケメン!」

勇者由良夏樹は、魔王ギーゼラ・シラーにときめいてしまった。