軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10「王様の名前とか興味なくね?」

まず、話を始めたのは魔王ギーゼラだった。

「ブレイバーズ王国に潜入している魔族たちはすべて引き上げさせた」

「なんで?」

「王国側が本格的に動き始めた。第二王女アマリリス・ブレスコットをはじめ、ベアトリス・ブレスコット、騎士団長ランドル、宮廷魔法使いレオニー・トットが死んだことで、我々を無視できないと考えたのだろう」

「おそっ」

夏樹ならば、祐介を取り逃し、アマリリスが死んだ時点で全力で魔族を潰すために動いたはずだ。

行動が遅すぎる。

ブレイバーズ王国の事情は知らないが、どうせ人間だ。派閥争いだかなんだかで、動くに動けなかったのだろう。

「……ギーゼラ様、第二王子ルーサー・ブレスコットも亡くなっています」

「そうだった。先ほど、新たな情報として届いたのだったな」

「……知らない人だなぁ。なんで、死んじゃったの?」

「理由は定かではないが、召喚された勇者に斬り殺されたらしい」

「いい仕事しますねぇ」

夏樹は拍手をした。

どこのどいつだか知らないが、異世界人の、しかも王族を殺すとはセンスがある。

「ルーサー・ブレスコットは、魔族との和平を求めている変わり者だったらしい」

「へぇ」

「人当たりもよく慕われていたようだが……そういう者こそ裏で悪どいことを考えている場合が多い。いや、死者を悪く言うものではないな」

「あの国の王族なら碌でもないこと考えているのは間違いないって。どうせ和平も魔族さんに無理難題突きつけて奴隷のように扱うつもりなんだって」

「かもしれんな。実際、過去にそのような提案をしたものはいた。人として扱おう、だが、奴隷だと」

「いやいやいや、それは和平じゃないし! ていうか、あの国の奴隷は人間扱いされてないからね!」

「無論、断ったさ。魔族は人間よりも単純な能力ならば強い。利用しようとする者がいなかったわけではないのだ」

魔族が人間に負けていることといえば、数と性根の腐り具合だけだ。

「王族が数名この短期間で死んだことは問題だ」

「そうなの?」

「残念だが、現在残っているのは第一王子トレイシー・ブレスコットと第三王女ジョスリン・ブレスコットだけだ。王位争いは自然と終わり、トレイシー・ブレスコットが次期国王として権力を手に入れるだろう」

「――あいつか」

「さすがに知っているか」

「いや、知らないけど。ちょっと知っているふりをしてみました」

「なぜ知っているふりをする必要がある!?」

流れ的に、ちょっと知ったかぶりをしてみたせいで夏樹は怒られてしまった。

しかし、勇者は素直に謝れる。

「ごめんなさい!」

「ふう。まあいい。トレイシー・ブレスコットはわかりやすいブレイバーズ王国の人間だ。魔族を害獣のように扱い、滅ぼすことを公言している。人間の他の国からも支援者は多い」

「へぇ。んじゃ、そいつを殺せばもう人間なんてまとまらないでしょう」

「長い目で見れば、な。だが、やはり一番厄介な存在は――国王サイラス・ブレスコットであろうな」

夏樹のお記憶では、顔こそ覚えていないが、数回言葉をかけられたことがある。

「……あのおっさん、サイラスって名前だったんだ」

「知らなかったのか!?」

「だって、興味なかったし。覚えるほど会わなかったし」

記憶を掘り返して出てくるのは、召喚時に「勇者よ! よくぞ我が国においでくださった! 魔王を倒し、この世界に平和を!」とかゲームに出てきそうなテンプレを言い放ったことや、「娘は役に立っているかね?」と言われたことくらいだ。

個人的に、好きも嫌いもないが、可愛がっていた王女が妻子持ちの騎士団長と不倫関係にあるのを知らない可哀想な人だなって感想くらいだった。他には興味がなかった。

「……本当に夏樹は、この世界の者に興味がないのだな」

ギーゼラだけではなく、ラーラとオズワルドも困惑を混ぜた苦笑を浮かべていた。