軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「父とまもんまもんじゃね?」④

「おやおや、ご挨拶に行くと聞いていたのに帰ってこないと思ったら、どうしてみんなで頭を下げているのかねぇ?」

「あ、森田のおばあちゃん」

サマエルとマモンが真門一家と頭を下げあっていると、家の中に亜子の祖母である森田のおばあちゃんが入ってきた。

「ごめんなさいねぇ、サマエルちゃん、マモンちゃん。きっと息子がマモンちゃんがあーだこーだと質問ばかりしたんでしょう?」

「か、母さん」

「亜子ちゃんは可愛いからねぇ、過保護になるのはわかるんだけど……マモンちゃんはいい子だよ。安心して任せなさい」

「――っ、まもんまもん……森田のおばあちゃん」

森田のおばあちゃんは、優しい笑みを浮かべて一同を見る。

魔族に比べれば短命ではあるが、人としては長い時間を生きて、多くのことを経験してきた人の言葉は安心ができた。

門治も母の言葉を否定するつもりはなかったのか、口をつぐんで、深くマモンにもう一度頭を下げた。

「門治、撫子さん、亜子ちゃん、マモンちゃんはいい子だから大丈夫、大丈夫」

森田のおばあちゃんの言葉に、門治たちは頷く。

サマエルも、魔族とかそういうことは抜きにしてありのままのマモンを見てくれている森田のおばあちゃんに感謝した。

「さあさあ、堅苦しいことはやめてご飯にしましょう」

森田のおばあちゃんが、手を鳴らす。

異論はなかった。

「いいお肉をいただいたのよ。せっかくだからすき焼きにしましょう」

「すき焼きだー! やったー!」

サマエルが万歳する。

今まで何度も良い食材を使っても、ご家庭のすき焼きの味にならなかった。

家によって味が違うとはいえ、サマエルが作るとどことなく味気ないのだ。

サマエルは森田のおばあちゃんの家で食べさせてもらえっていたすき焼きが大好きだ。

最近は、マモンの手前できないが、少し前まではお肉を持って遊びに行き「おばあちゃん、すき焼きたべたーい」とおねだりしていたこともある。

「あらあら、サマエルちゃんったら、相変わらずすき焼きが好きねえぇ」

「森田のおばあちゃんの作るすき焼きが好きなんだって!」

「もうっ、嬉しいこと言ってくれちゃって!」

「お手伝いします!」

「私も手伝います」

「私も!」

サマエルが森田のおばあちゃんと一緒に台所に向かうと、撫子と亜子も続く。

残されたのはマモンと門治だ。

「しばし、お待ちまもんまもん」

「……はい」

マモンは立ち上がると、迷うことなくサマエルの自室に入り隠してある秘蔵の芋焼酎を抱えて戻ってくる。

「……飲みまもん!」

「――いただききます!」

門治が焼酎好きであると知っていたマモンは、言葉少なく彼と飲みあった。

両者とも酒は強く、ふたりで一升瓶の半分を飲み終えたころ、すき焼きができて食事が始まった。

森田のおばあちゃんが作るすき焼きは、牛肉を割下で焼くのではなく、鍋のように食材を入れて煮込むタイプだ。

やや濃い目の味付けで、生卵をくぐらせて食べるのが美味しい。

葱や糸こんにゃく、焼き豆腐にもしっかり味が染みていて美味しかった。

秘蔵の焼酎を勝手に飲まれていたサマエルがショックを受けたようだが、この場でマモンを追求することはしなかった。代わりに、やけ酒だとばかりにどこかに隠していた日本酒を持ってきて森田のおばあちゃんと撫子と一緒に楽しく飲み出した。

亜子は残念ながら未成年なので、お茶だ。しかし、彼女は家族とマモンたちが一緒に楽しく食卓を囲んでいる姿を見て本当に嬉しそうだった。

――ここで終わればよかった。

「それで、ひ孫の顔はいつ見られるのかねぇ?」

――森田のおばあちゃんの何気ない一言で、楽しい空気が張り詰めた。

――主に、亜子の父である門治の周りだけだが。

「はわわわわわわわわわわわわ」

サマエルが恐る恐る門治を見ると、彼は顔を真っ赤にして額に血管を浮かび上がらせていた。

「……マモンさん、まさか娘と」

「ままままままままま! 誤解だまもん! 亜子さんとは清い関係でまもんまもん!」

誤解を解こうとするマモンだったが、亜子が頬を赤くすると、爆弾発言をした。

「……マモンさんが望むなら、私はいつでも」

つう、と門治の瞳から涙が流れた。

男親にとって、いつか娘が嫁に行く日が来るだろう。

しかし、いろいろ心に折り合いがつかないのも事実だ。

「マモンさん……表に出てもらおうか。理不尽だとわかっているが、決闘だ!」

「まもんまもん! いいでしょう! この男マモン! まもんまもんとしてその決闘まもんまもんしましょう!」

酒が入っているせいもあるだろう。

マモンは門治の申し出を快諾した。

――この日、七つの大罪を司るマモンと真門一家の家長真門門治は畑で殴り合った。

――結果は、クロスカウンターによるダブルノクアウトだった。

――翌日、ふたりはなんか親友になっていた。