作品タイトル不明
8「お煎餅にはやっぱりお茶じゃね?」②
「うわっ!? なにこれ! 真っ黒な飲み物でちょっと抵抗あるけど、甘くてパチパチしてて美味しい!」
「ふむ。煎餅というのは実にうまい。歯応えがあり、満足感が大きいな!」
「こちらのチョコレートも絶品でございますね。中に、甘くとろけるなにかが入っています。あと、ナッツですね。素晴らしい」
ラーラはコーラ飲料を、ギーゼラは煎餅を、オズワルドがチョコレートバーを気に入ったようだ。
異世界にはない飲料と食べ物を披露した夏樹は、ドヤ顔だ。
スーパーで買ってきただけではあるが、まるで地球代表みたいな顔をしている。
「――食べ物からして、この世界と夏樹の世界は違うのか」
「うーん、人間と魔族が戦争しているわけじゃないからなぁ。根本から違うんだよ」
「ほう」
「基本的に、魔族はいるけど普通の人間は存在を知らないんだ。魔法なんかも同じだね。俺も、元は知らない人間だったよ?」
「………………一般人だったのか!?」
ギーゼラは目が飛び出すんじゃないかと不安になる程、大きく目を見開いた。
ラーラとオズワルドも「嘘だぁ」と口にこそ出さないが、顔が全力でそう物語っている。
「ゴリゴリの一般枠ですから! この世界に来て初めて魔法も魔族も知ったからね」
「……そんな一般人に魔王軍が壊滅状態にされるとか……地球というのは戦闘に特化した人間が住んでいるのか!?」
「そんなことないじゃない! そりゃ強い人もいるんだろうけど」
夏樹だって、この世界に召喚されるまでどこにでもいる一般人だった。
聖剣さんに選ばれ、海の勇者としての力を知り、地球に帰りたい一心で戦った結果強くなっていたに過ぎない。
仮にだが、もし召喚したブレイバーズ王国をはじめ人間たちが夏樹を大事に扱ったとしても、結果は変わらなかっただろう。
この世界に問答無用で連れてこられた時点で、夏樹にとってはただの誘拐でしかないのだから。
「えっと、夏樹って向こうの世界で最強とか?」
「はっはっはっ! ラーラさんはおもしろいなぁ! 俺なんて大したことないっすよー!」
「ひぇっ、夏樹の故郷こわいよ!」
おずおずと尋ねたラーラは、夏樹の返答を受けなにを想像したのか怯えた声を出した。
「個人的には興味深くはあります」
「あ、じゃあ、機会があればぜひ遊びにき」
「いえ、それはご遠慮いたします。お気持ちだけで結構です」
興味があるらしいオズワルドを誘ってみたら、真顔で断られてしまった。
彼らの脳内で地球がどんなことになっているのか気になってきた。
「まあまあ、難しい話は抜きにして。まだまだコーラあるよー。チョコもお煎餅もあるよー。ポテトチップスもあるよぉぉぉぉぉぉ!」
テーブルにどんどん並べていく。
ごくり、と三人の喉が鳴った。
「……ま、待て、夏樹よ。気持ちは嬉しいが……さすがにこれほどの美味を我らだけで食べるのは心苦しい。四天王や、他の種族の長たちも呼んでもいいだろうか?」
「そんな呼ぶなんて! 皆さんの分もあるので、ぜひお配りください!」
夏樹は心の底から友好的に微笑んだ。
感動する魔王たち。
(恐怖だけじゃ真の仲間にはなれないって義政先生も言ってた! 美味しいもの一緒に食べたらみんな友達! 賄賂じゃないよ! 友好の品だよ! べ、別に魔王さんたちに地球の食べ物食べてほしいってわけじゃないんだからね!)