作品タイトル不明
7「お煎餅にはやっぱりお茶じゃね?」①
ホームルームという名の作戦会議を終えた夏樹は、ひとり魔王の元へ向かっていた。
勝手知ったる他人の家とばかりに、闊歩していた。
「あ、夏樹だー!」
「ラーラさんだー!」
そろそろ魔王の執務室に着くというところで、魔王の娘であるラーラ・シラーと出会した。
彼女は母譲りの褐色の肌と銀髪を持つ、可愛らしい少女だった。
母と祖母が幼い外見をしているのに対し、ラーラは十六歳ほどに見える。
正確な年齢は知らないが、言動から夏樹たちと変わらない年齢だと思う。
「ギーゼラさんに会いにきたんだけど、いる?」
「いるよー! さっきまでオズワルドと他種族の長と話をしていたけど、今は休憩しているんじゃないかな?」
「ラーラさんはなにしていたの?」
「ペガちゃんのお世話だよ。ブラッシングして餌をあげて、ちょっとお散歩」
「ペガサス大事にされてるなぁ」
「ペガちゃんは大事だもん!」
夏樹は、ペガサスに餌や水を与えたことがあっても、ブラッシングをしたことはない。
良き主人と巡り会えて大事にされていたことを嬉しく思う。
自分のようなぞんざいな扱いしかしなかった人間にも最後までついてきてくれたペガサスには幸せになってほしい。
「ペガちゃんだっけ? よろしくお願いします」
「うん! 任せて!」
優しい笑顔を浮かべるラーラに、つい夏樹も笑顔を浮かべてしまう。
「ママのところに行くんでしょ? 一緒にいこう!」
夏樹はラーラに手を引かれて、魔王の執務室に向かった。
「――よく来てくれた由良夏樹」
「どうもです」
ギーゼラは執務机を前に紅茶を飲んでいた。
彼女の傍にはティーポットを持つ執事オズワルドもいた。
なにやら疲れた顔をしている。
「座ってくれ」
「失礼しまーす」
お言葉に甘えてソファーに座ると、アイテムボックスから煎餅を取り出してバリバリ食べ始めた。
「……え? なにそれ?」
「食べる?」
興味津々に夏樹の食べる煎餅を見ているラーラに、袋を差し出した。
彼女は一瞬躊躇ったが、好奇心には勝てなかったようで一枚取り出して齧った。
「んんっ!? 固くてびっくりしたけど、美味しい! なにこれ、初めての味! 噛めば噛むほど美味しいんだけど!?」
「お茶もどーぞ」
ペットボトルのお茶を取り出すと、プラカップを用意して注ぐ。
「緑色の水って飲んで平気なの!?」
「へーきへーき! お茶だから!」
「う……怖いけど、好奇心に勝てない! ――あ、さっぱりしてる!」
ばりばりお煎餅を頬張り、お茶を飲む。
ラーラはあっという間に三枚の煎餅を食べた。
「魔王さんとオズワルドさんも食べる?」
「……いいのか?」
「私もよろしいのですか?」
「こういうのはみんなで食べようよう。さ、座って座って」
お煎餅だけでは味気ないので、夏樹はチョコレートや、ポテトチップス、コーラ飲料を取り出し並べた。
「異世界の魔族たちよ! さあ、我が故郷の菓子を味わうがいい! ふははははははは!」