作品タイトル不明
6「いやーな予感がするんじゃね?」
「なんつーか、俺たちって酒呑童子の娘で、京都の鬼をシメてたやばい鬼だよな? 異世界来てから影薄くね?」
星熊童子は、ビニールシートに寝転がって異世界の青い空を眺めてそんなことを呟いた。
「姉貴はいいじゃねえか! オーガと思いっきり喧嘩したじゃねえか! あたいなんて、まともに戦ってすらいねえからな!」
「べあべあべあぁ!」
「ばかっ、何言ってんだ! 熊童子は可愛いって存在感が仕事しているからそんな些細なことを気にしなくていいんだよ! いるだけであたいたちが癒されるんだ!」
「そうだぞ! 俺たち姉妹の唯一の癒しは、熊童子じゃないか!
虎童子は、元気ない言葉を発する熊童子を必死に慰めた。
起き上がった星熊童子も、熊童子の背中をわしゃわしゃと撫でた。
「存在感は諦めるしかない。由良夏樹はもちろん、佐渡祐介もキャラが濃すぎる。銀子と小梅も口調でキャラが立ってるしな。新参者のベヒモスとフン・フナフプなんてもすもすこしこしだぞ! 存在感で勝てるわけがねえだろ!」
「ダーリンたちも結構濃くなってきたもんなぁ。義政先生なんて、そこにいるだけで圧倒的な存在感があるぜ!」
「べぁ」
三姉妹はごろんとビニールシートに寝転がった。
「ま、チャンスを見つけては目立とうぜ」
「あたいはダーリンだけがみてくれればそれでいいぞ!」
「べあべあ!」
「おい、よせよ! 熊童子! 一途とか照れるだろ!」
「俺の見立てでは、もう少し押せばいけると思うぞ! がんばれ!」
「もう姉貴まで!」
虎童子は、姉と妹に応援されてくすぐったさを覚えていた。
物心ついたときから、殺伐とした世界で生きていたが、姉妹はいつも一緒だった。
弟の金童子は、唯一の男の子のせいかあまり姉たちと遊びたがらない。
茨木童子は、強くなることに執着していて怖く、最近では安倍東雲に入れ込んでおかしかった。
正直、令和の時代まで生きながら、鬼として生きていくことは退屈であり、不安でもあった。
しかし、鬼の生でも生きていればおかしなことがおきるものだ。
茨木童子が倒され、三姉妹は安倍一族の庇護下に入った。
制約はあるが、基本的に自由だ。
大きすぎる変化に戸惑っている暇もなく、今は異世界にいる。
「……ったく、昔は強い敵と戦って死んじまいてえって思ったこともあったが、生きていてよかったな」
「そうだな」
「べあ!」
姉妹は苦笑した。
不思議と、ここ数日の日々がこの数百年の中では最も色鮮やかだった。
由良夏樹を中心に、「なにか」が集まっている。
彼の近くにいれば、退屈することはないだろう。
「ま、大将のためにせっせと働くっていうのはもちろんなんだが――そろそろ現実と向き合おうぜ」
「…………」
「……べぁ」
三姉妹が泣きそうな顔をした。
口を開いたのは、星熊童子だ。
彼女は震える唇で、言った。
「――この世界に姉貴の気配あるんじゃね!?」