作品タイトル不明
4「遠足の準備は念入りにじゃね?」①
七森千手は、トレードマークになりつつある丸型のサングラスをかけて立つ。
手にはバインダーが握られ、千手の前にはクーラーボックスやアウトドアチェアに向島愚連隊の面々が制服姿で着席している。
「ホームルームをはじめるぞ!」
千手は制服から、スラックスにYシャツ、ニットベストとアームカバーと少々ご年配の教師にいそうなスタイルになっている。
ただし、サングラスを着用しているので、怪しさのほうが大きい。
「魔王から今日の予定をどうするかって、遣いが送られてきたんだが。由良ぁー!」
「へい!」
「なにかすべきことがあるのなら、言ってみろ!」
「人間を鏖殺したいです!」
「相変わらず物騒だな! だが、異世界生活三日目になってベッドが恋しくなってきたのでよしとしよう!」
「あざーっす!」
ゴッドの金で買ったテントと寝袋は、比較的快適な方だが、やはり慣れ親しんだ自分の家のベッドで寝たいと思うのは仕方がないことだ。
夏樹、一登、澪、都、円という十代の少年少女が千手と同様のようで「うんうん」と大きく頷いている。
「先生!」
「なんだ佐渡」
「僕は初日からクソ王女に酷い目に遭わされて、昨日はバトルでした!」
「日頃の行いだなぁ!」
「だから、今日は魔族さんと戯れたいです!」
「佐渡ぃ! お前はいつでも絶好調だなぁ! だが、気持ち悪いから却下だ!」
「そ、そんな」
祐介はブレない。
悲しそうな顔をするが、隣に座るソーニャに慰められると、すぐに鼻の下を伸ばす。
「えっと、僕もいいですか?」
「よし、三原! 真面目なことを頼むぜ」
「あはは。魔族側は今後、どう動くんですか? 俺たちだけが人間と戦うのはよしとしないんですよね」
「いい質問だ! さすが学級委員!」
「なぜ!?」
現在、夏樹たちと魔族の足並みは揃っていない。
オーガ族のグランドルと、彼の息子であるゴールンとガイオンは、友好的であり、昨晩も共に戦ったが、他の種族が今後どのような動きをするのか正直わからない。
昨日の戦いで、夏樹たちの強さを見せつけはしたし、夜襲をしたブレイバーズ王国の部隊を壊滅させて、王女ベアトリス・ブレスコットと宮廷魔法使い筆頭のレオニー・トットを亡き者にしたことは魔王に報告済みだ。
すでに各種族に情報共有されているだろう。
紳士であるグランドルでさえ、憎き敵対国であるブレイバーズ王国の王女と宮廷魔法使いを討ち取ったことを喜んでいたし、夏樹たちを称賛していた。
昨日の襲撃の結果をきっかけで、他の種族も友好的になってくれると嬉しい。
「――はい、先生」
「フン・フナフプくん!」
千手は神を相手にしても態度は変えなかった。
フン・フナフプは気にした様子もなくアウトドアチェアから立ち上がると、軽く一礼して話し始める。
「私は直接戦うことでの協力はできないが、情報を与えることはできる」
「……正直、それはありがたい。頼む」
「承った。まず、ガープとアマイモンだが、私とベヒモスっちはこのふたりと友好的にしていた。ふたりは、他の者たちと馴れ合うつもりはないようだ」
「協力関係じゃないのに人間側についているのか?」
千手の疑問に、フン・フナフプは苦笑いを浮かべる。
「私もベヒモスっちもだが、絶望の神ぜっくんによってこちらの世界に連れてこられ、ブレイバーズ王国の城を使っていいと言われたので滞在していただけだよ。無論、私は協力的であろうとしたが、ガープとアマイモンはまず協力などしないだろう」
「あいつらは戦って勝つことが最大の目的だもんな! 由良夏樹が魔族側にいるから人間側って立ち位置にいるだけだぞ! その気になったら、関係なく暴れるだろうな!」
フン・フナフプの説明に、ベヒモスが被せる。
夏樹は心底面倒臭そうな顔をした。
「うわー、めんど」