軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3「夏休み明けの転校生ってテンション上がるんじゃね?」

「はーい。皆さんが静かになるまで、先生が朝のお茶を飲もうとして火にかけていたお湯が沸いてしまいました」

「……面白いことを言おうとしてなーんも思いつかなかったから、苦し紛れなこと言いだしよった」

「…………」

由良夏樹は、魔王ギーゼラの許可を得ると、とうもろこしの神フン・フナフプと最強の獣ベヒモスを紹介するため、拠点としている魔王城の中庭にいた。

「はーい。今日は転校生を紹介します。ぜっくん陣営からなっちゃん陣営に転校してきた、とうもろこしの神フン・フナフプさんと最強の獣ベヒモスさんです。仲良くするように!」

「こやつ、やり直しよった!」

小梅に突っ込まれた夏樹は、最初のやりとりはなかったかのようにやり直した。

「マヤ神話のフン・フナフプです。とうもろこし畑の土地を欲して異世界にやってきましたが、夏樹先生が北海道の農家さんを紹介してくれるというので寝返りました。仲良くしてください」

「おどれもノリがええのう! つーか、笑顔で寝返ったとか言ってええんか? 隠すところじゃないんかのう!?」

フン・フナフプは存外ノリがよく、夏樹がアイテムボックスから取り出した詰襟を、半裸の肉体の上から上着だけひっかけている。

少々異質な光景だ。

「はーい。静かにー! 転校生はもうひとりいるぞ! 最強の獣のベヒモスさんだ! 今日はお休みだが、リヴァ子さんの幼馴染みだそうだ。みんなも仲良くするように!」

「ここでベヒモスかーい! つーか、おどれはまたかまってちゃん発動してぜっくんに利用されたんじゃろう!?」

「俺様は最強の獣ベヒモスさまだ! 夕日をバックに河川敷で喧嘩した大地の勇者とマブダチになったことをきっかけに、ぜっくん陣営から寝返ったぞ!」

「おどれらが戦っとったんは真夜中じゃろう!?」

夏樹の中学校の女子制服を着用するベヒモスは、背が高い黒髪のワイルドなお姉さんなので絵的に少々無理があった。

だが、本人は気にしておらず「オウ! ジャパニーズセイフク!」となぜかテンションが上がっているので気にしなくていいだろう。

「……ボケ担当の小梅さんにこうも突っ込ませるとは、フン・フナフプさんとベヒモスさんはやべーっすね」

「神様と高位魔族を相手に「さん」付けで馴れ馴れしい青山さんも大概だと思いますけど」

「……フン・フナフプ様は、正直、直視できないほど神々しいね」

銀子が小梅の言動に震えるが、水無月姉妹からすると銀子だって大概のようだ。

「……なんで人間と戦ったら勇者陣営に強力な仲間が増えているのかまったくわかんねぇ」

頭痛を覚えているのは、ダークエルフであり、魔王ギーゼラの母であるソーニャだった。

メイド服を着用した十代前半の少女の外見をしているが、彼女は長い時間を生きたダークエルフだ。

「つーか、魔族って言葉こそ同じだが、意味合いが違いすぎるだろ。逆立ちしても勝てる気がっていうか、手も足もでないだろ」

特に、愕然としているのは、「魔族」を名乗るベヒモスと、同じ「魔族」を名乗りながらあまりにも力の差があることだ。

地球でいう魔族は神々と同等の力を持つ存在だが、こちらの世界ではあくまでも人間以外の種族でしかないのだ。

「……そもそもなーんでベヒモスが仲間ポジなんじゃ? リヴァ子も由良さん家の末っ子みたいな枠に収まろうとしておるし、夏樹が集めとるんか、春子ママが集めとるんかようわからんのじゃが!?」

「こまけーこと気にすんなよ、小梅ぇ! お前もあっちにぷらぷらこっちにぷらぷらしてたと思ったら、中学生といい感じになりやがって! 通報すんぞ!」

「ええいっ、馴れ馴れしく肩を組むな! あと余計なお世話じゃ! 誰にも遊んでもらえないと言うて小学生と全力で遊んで保護者から不審者扱いされたおどれには言われたくないわい!」

リヴァ子と小梅が友人だったように、やはりベヒモスとも友人だったようだ。

夏樹は、ベヒモスのことを小梅に任せようと決める。

「よーし! 転校生の紹介が終わったから、ホームルームを始めるぞー!」

「お前はいつまで先生役やってんだよ!」

夏樹の背後に移動した千手が、バインダーで頭を引っ叩く。

「先生役は俺だろう!」

「えー!? 千手さんがボケるの!?」