作品タイトル不明
間話「父とまもんまもんじゃね?」②
真門門治の瞳は、まっすぐにマモンを見ていた。
嘘偽りなく返事をしないといけないことは、サマエルにもマモンにも十分すぎるほど理解できていた。
(――マモン! 決めるときだ!)
サマエルが心の中で応援する。
彼女の声が届いたのか、マモンはその場に手をつき深々と頭を下げた。
「まもん! 俺、いえ、私は――亜子さんと誠実におつきあいさせていただいておりまもん!」
(い、いつもよりまもんが少ないのは頑張った証拠なんだろうけど、つっこみてぇ!)
「決して不純なお付き合いではなく、お許しいただけるのであれば……末長く亜子さんと一緒にいたいと考えておりまもんまもん!」
「――マモンさんっ!」
マモンの真摯な言葉に、亜子が口を押さえて涙を浮かべる。
もしかしたら、内心は不安だったのかもしれない。
種族の違いもある。
寿命だって違う。
魔族が人と一緒に生きていくにあたって不安になることがあるように、人間だって魔族と共に生きていくことに不安を覚えるのだ。
「マモンさん、正直に言ってくださりどうもありがとうございます。男女の関係に親が出しゃばるなどして、過保護と思われるでしょうが、亜子はまだ未成年。対してあなたは立派な大人だ。仮に、学生のような付き合いであったとしても、親として言いたいことは少なからずあるのです」
マモンと亜子の馴れ初めは、亜子の祖母である森田のおばあちゃんが紹介したことがきっかけた。
男女関係から始まったいざこざで心に傷を負った亜子を、どのような理由でマモンに託そうとしたのかサマエルにはイマイチわからないが結果的には、両者にとってよい出会いとなったことは間違いないと確信している。
(ただなぁ、亜子ちゃんはなんとなく気づいていたって言うか、近所の人たちは私やマモンが魔族だってことはなんとなく察しているようなんだけど、亜子ちゃんのお父さんとお母さんはどんな反応をするのか、怖いなぁ)
仮に、魔族であることを隠して亜子と結ばれたとしよう。
亜子は両親に隠し事をしながら生きなければならない。
それは、望まないことだ。
だが、魔族だけではなく、神や妖怪のことを受け入れられる人間とそうではない人間がいるのも事実。
真門夫妻が、自分たちを受け入れることができる人間であると願いたい。
(森田のおばあちゃんのお子さんだから大丈夫だと思うけど……いや、希望的観測はダメだな)
最悪な場合、拒絶されるだろうし、霊能力者を連れてこられる可能性だってある。
正直、向島市から由良夏樹を連れてこない限り、人間に倒されることはないだろうが、亜子の両親と敵対するのはサマエルとしても望まない。
しかし、万が一の場合は、自らの手で亜子とご両親から自分たちの記憶を消そうと決意し、ポケット中で五円玉を握りしめた。
「マモンさん」
「まもん!」
「……失礼ですが、あなたは我々に言うべきことがあると思っています」
「――っ、まもんまもん。やはり、気づいていたのでまもんまもん」
門治はゆっくり頷いた。
ついにこの時が来た、とサマエルが息を飲む。
「――実は、このマモン! 人間ではなく、七つの大罪を司るビックネームの魔族であるマモンでありまもんまもん!」
「そんなことはどうでもいいのです!」
「まもん!?」
「なんで!?」
人間にとって重要なことを言ったはずが「そんなこと」と一蹴されてしまい、サマエルだけではなく、マモンもさすがに驚く。
「魔族だろうとなんだろうと、娘に対する気持ちが本物ならとやかく言いません! しかし、しかし! ひとつだけ、気掛かりがあるのです!」
ある意味、門治が森田のおばあちゃんの息子であるとはっきりわかった瞬間だった。
「マモンさん! あなたはまもんまもんチャンネルという動画を運営する動画配信者ですね!」
「ま、まも」
「将来が不安定な職業の方に、娘を託していいのか、私はっ、私はどう判断すればいいのかわからないのです!」
ツッコミはしない。
黙って見ていようと決意していたサマエルだったが、
「そっちかよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
我慢できずに叫んでしまった。