軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

プロローグ「ツッコミが冴え渡るんじゃね?」

魔王ギーゼラ・シラーは、満面の笑みを浮かべている勇者由良夏樹を前に、頭痛と胃痛を覚えていた。

「……すまないな、由良夏樹。我はこう見えてそれなりに年齢を重ねている。少し耳が遠くなったようだ。もう一度頼む」

ギーゼラは眉間を揉みながら、夏樹に問う。

「では、改めて。勇者一行に仲間が加わりました! こちらは、最強の獣ベヒモスさん!」

「もすもすもすもすもすもすもすもすもすもすもすもす!」

「マヤ神話からとうもろこしの神様フン・フナフプさん!」

「こしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこし!」

「でも、非戦闘員だからよーろーしーくーねー!」

「だぁあああああああああああああああ! 意味がわからん! 夜の間に、お前たちが戦っていたのは知っていたが……最強の獣ととうもろこしの神様だと!? 意味がわからん! しかも、最強の獣さんもとうもろこしの神様も私よりも強いじゃないか! なのに非戦闘員だと!?」

髪をかきむしるギーゼラに、夏樹が「どうどう」と落ち着かせようとする。

「詳細はめんどいからはしょるけど」

「詳細は大事だから省くな!」

「……じゃあ、簡単にね。人間の国が攻めてきました」

「ああ」

「全員ぶっ殺しました」

「……あ、ああ」

「人間側についている絶望の神ぜっくんが俺たちの世界から連れてきた最強の獣ベヒモスさんととうもろこしの神様フン・フナフプさんが現れました」

「……それで?」

「なんやかんやあって、なっちゃんの仲間になりました! やったね!」

「その、なんやかんや、を話せと言っているんだ!」

ぜー、はー、と息を切らしながらツッコミ続けるギーゼラは、今にも倒れそうだ。

「ギーゼラさんはわがままだなぁ」

「……私が悪いのか!?」

「ふたりとも、とりあえず魔族に害を与えないってことは約束したから。安心していいよ」

「……本人を目の前にして、こんなことを言うのは気が引けるが……一度寝返った者が再度寝返らないという保証は?」

「ないけど。大丈夫、寝返ったらちゃんと俺が殺すから」

変わらず屈託のない笑顔の夏樹だが、彼は言葉通り実行するだろうとギーゼラは知っている。

恐ろしいほど力を持つベヒモスとフン・フナフプだが、ギーゼラは夏樹のほうが怖かった。

「……ふう」

どちらにせよ、夏樹が敵対したら魔族は終わる。

先の戦いで、そのことは痛いほど理解している。

彼は魔族の味方だと言った。ならば、信じる以外の選択肢がない。

「……わかった。由良夏樹が言うのなら、危険はないのだろう」

魔族の長として軽々しい選択はできないが、今は夏樹を信じるしかない。

「最強の獣ベヒモス殿、とうもろこしの神様フン・フナフプ殿、よろしく頼む」

意図せぬ事態とはいえ、味方になってくれるのであれば礼を尽くすのが魔王ギーゼラだ。

ギーゼラは、頭を下げた。

「おう! 任せておけ! 俺がいれば人間なんぞ八つ裂きだ!」

「こちらこそ、よろしく頼む。戦いはできぬが、とうもろこしの栽培方法を伝授しよう」

「いや、お前ら普通に喋れるのか! もすもすこしこし以外にちゃん喋られるなら、最初っからそうしてくれ!」

「……ギーゼラさんは良いツッコミするなぁ」

感心して拍手するかつての宿敵に、ギーゼラは血管が切れそうになった。