軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

98「大地の勇者と最強の獣じゃね?」②

祐介は、大地から得た力を身体に循環し、破壊された肉体を修復していく。

「――――おおっ! すごいな、お前! 気持ち悪いけど、すごいぞ!」

一瞬、悲しいことを言われた気がするが、勇者は些細なことは気にしない。

きっと、尊敬する友人夏樹ならば、笑って流すはずだ。

(力を感じろ。大地の力を、恵みを、生命を――)

かつて祐介は、異世界に召喚されたが、その扱いは勇者としてではなく、尊厳を踏み躙られたものだった。

屈辱であり、悲しくあり、思い返すだけで泣き叫びたくなる衝動に駆られる。

――おかげで人間が大嫌いになった。

例外は、家族と夏樹たちだけ。

正直言ってしまうと、魔族だって嫌いではないが少し怖い。

自分を道具以下に扱った人間と同じではないか、と思うことはある。

しかし、ソーニャは自らの危険を顧みずに助けてくれた。

日本で出会った神々や魔族は人間のようではなかった。

もちろん、人間にもいいひとはいるだろうし、魔族や神だって嫌な者はいるだろう。

(僕は異世界で変わるんだ。誰かに怯えなくていいように、友達のためにまっすぐ立てるように!)

大地が祐介を応援するように力を与えてくれる。

「……さあ、踊ろう! マドモアゼル!」

「なんかキモいけど、楽しく遊ぶぞ!」

祐介の拳とベヒモスの拳がぶつかった。

衝撃波が周囲を襲い、両者の拳から放たれた力が行き場を失い地面を砕く。

「――いいぞ! お前、すごくいいぞ! お前なら、全力で遊べるな!」

「紳士として淑女のお誘いには全力で応えるよ!」

「いくぞぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」

ベヒモスの拳が、蹴りが、今までよりも早く、鋭く、力強く祐介を襲う。

対応できるのは、数発に一回程度だ。

ベヒモスの一撃は、あまりにも重い。

骨が砕け、内臓が悲鳴を上げる。

それでも、倒れる気がしない。

大地から与えられた力は、祐介に想像を絶する防御力と体力を与えていた。

そして、攻撃する力も。

「あははははあははははははははははっ! 壊れない! お前、壊れないな! いいぞ! いいぞ!」

拳と蹴りが、祐介を休ませることなく襲い続ける。

ベヒモスは、息を切らせることなく、攻撃の手を休めない。

肉体を使ったシンプルな攻撃だが、さすがは最強の獣を名乗るだけある。

相手が、大地の加護を受けた祐介でなければ、もう原型など残っていなかっただろう。

「楽しかったぞ! これで、終わりだぁあああああああああああ!」

ベヒモスの拳が唸る。

今までとは別物の、魔力が乗った一撃だった。

驚くべきことに、濃密な死が纏う拳を放ちながら、ベヒモスには殺意がまるでなかった。

彼女は、本当に祐介との戦いを楽しんでいるだけだったのだ。

(――なんだろう。戦いが楽しいって、思ったことなんてなかったはずなのに……力と力で正々堂々と戦うって、そうか……こんなに気持ちのいいものだったんだね)

祐介はすべての力を右腕に込める。

大地から与えられた魔力を、すべて注ぎ込んでいく。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおお! 魔族大好き系大地の勇者の一撃だぁああああああああああああ! アースギャラクシーまもんまもんフォーエバー魔族さんちゅっちゅキッークぅうううううううううううう!」

「いや、それパンチ!?」

夏樹を見習い、その場限りの勢いだけの技名と共に渾身の一撃を放った。

祐介の拳と、ベヒモスの拳は激突する。

――次の瞬間、ベヒモスの腕が音を立てて砕け、へし折れた。