作品タイトル不明
93「とうもろこしは齧りつきたくね?」②
夏樹は耳を疑った。
夏樹だけではない。
千手も、祐介も、一登も、東雲も、円も、征四郎も、義政も、そしてグランドルとジードル、ガイオンも、フン・フナフプの言葉の意味を理解できなかった。
「えっと、もう一回言ってもらっていいですか?」
「構わないよ。私は、とうもろこしを思いっきり作ることを目的にしているのだよ!」
「……なんでぇ?」
自信満々にそんなことを言われても困る。
「私は、マヤ神話の神だ。創造神イシュムカネーとイシュピヤコックの息子であり……いや、それは些細な問題だ」
「些細じゃなくない!?」
「グアテマラでとうもろこしを作っていたのだが、最近は品種改良やら、効率やら、人材コストがどうこうと大変だ!」
「そ、そうっすね」
「だが、私が望むのは、豊かな大地でのびのびと思うままにとうもろこしを作りたいのだ! あわよくば、トルティーヤをはじめとしたメキシコ料理店をオープンしたい!」
「……えぇ……」
マヤ文明に詳しくはない夏樹だが、創造神の息子であるフン・フナフプが上位の神であることはわかった。
実際、軽く戦ってみて、五割で勝てる気がしない。
自分の力もそうだが、聖剣さんの力もそれなりに引き出さないと勝てないだろう。
(俗っぽいというか、なんというか。動画配信者を目指す神や魔族よりは、いいんだけど、そのくらいの理由なら地球でやればいいのに)
「由良夏樹くん。君は、今――地球でやればいいのに、と思ったね?」
「心読んじゃらめぇ!」
「……顔に出ていたよ」
「おっと」
夏樹は手を顔を隠す。
戦う相手に思考を読まれるなど、やってはいけないミスだ。
「夏樹くん! その手の感じだと、えっちなお店のキャストさんみたいだよ!」
「え? 嘘?」
「普通に顔を隠せばいいだろうに、なんで目元をだけ隠してんだよ! わざとじゃねえのか!?」
祐介と千手がツッコミを入れる。
「……なっちゃんがどんなサイトを巡回しているんか、ようわかるわぁ」
「ああっ、また円ちゃんから冷たい視線がっ!」
夏樹は慌てるが、なかったことにはならない。
とりあえず、会話を進めることで誤魔化そうとした。
「そ、それで、フン・フナフプさんは異世界に?」
「そうだ。私は、未開拓のこの地で、とうもろこしを作る!」
「……ま、まさかそれだけの理由で、俺たちと敵対するのぉ?」
「正直なことを言わせてもらうと、神として人と戦うのは好まない。だが、絶望の神ぜっくんの誘いに乗ってしまったのだよ」
「またぜっくんかよ! あいつ、面倒臭えな!」
「実際、私はアマイモンやガープと共に行動しているがね。ぜっくんに従うつもりはないが、土地を貰い受けるにあたり、最低限の仕事はしよう。その一環として、由良夏樹くん――君たちを倒そう」
フン・フナフプが神力を高める。
全力ではないのだろうが、それでも底が見えない。
夏樹の頬に冷や汗が伝う。
「少々、よろしいでしょうか?」
「義政さん!?」
「なにかな、少年?」
夏樹だけではなく、誰もがフン・フナフプの神力の緊張していたところ、義政が手を上げた。
「フン・フナフプ様の行動理由はわかりましたが、ベヒモス様の行動理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」