軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「由良さんちは平和じゃね?」

七つの大罪の魔族。強欲を司る魔族マモンは、緊張していた。

「まままままままままもん……亜子さんのお父様とお母様が俺に会いたいと言っているようなのでまもんまもん」

「いや、会えよ。私だってちゃんとご挨拶するからな。お世話になってる亜子ちゃんのご両親で、おばあちゃんの息子夫婦なんだから、きちんと挨拶するのが礼儀だろう」

「まもん……し、しかし、いずれパパママと呼ぶ方たちですので、失礼がないように」

「…………マモンからパパママって呼ばれるのは嫌だなぁ」

缶ビールをぐびぐび飲みながら、さまたんは考える。

強面のマモンが「パパ」「ママ」とにっこり笑う姿は、ちょっとしたホラー映像だ。

亜子とおばあちゃんは胆力があるが、ご両親までそうであるとは限らない。

「あのさぁ」

マモンとさまたんに続き、三人目の声がした。

白いスーツをぴしっと着こなす、イケオジこと――魔王サタンだった。

「なんで由良さん家にいるの? 特に、マモン。お前は青森で終身刑だろう!」

「このまもんまもんサタン! まるでさまたんの動画が伸びないような言い方を! 許さん!」

「逆に聞くけど、登録者百万人達成すると思ってるのかよ?」

「…………ところで、亜子さんのご両親のお話に戻るのでまもんまもん」

「おい、待て! マモン! なんで、話題を逸らした! 登録者七万人を超えたさまたんチャンネルだぞ! 百万人まであと少しだ!」

「まったく少しではないでまもんまもん」

「そうじゃなくてね! なんで、青森にいるマモンとサマエルが向島にいるの!? 春子さんから留守を預かっているのに、こんな不審者がいたら合わす顔がないんだけど!」

サタンの言葉通り、マモンとさまたんは向島市にある由良家にいた。

家主の春子は職場の同僚と食事をして帰ってくるため、遅い。

リヴァ子は、本格的に由良家に住むと決めたため、拠点のマンションから配信のための機材を取りに戻っている。

ジャックとナンシーは、先日壊れた宇宙船が直ったので引き取りに行っている。今夜は、友人と飲むそうだ。

そして、夏樹たちは異世界にいるので、いない。

「はっ、サタンよ。落魄れたでまもんまもん! 女にだらしなかった魔王が、人間ひとりに入れ込むとはな! まーもんもんもんもんもん!」

「その笑い方なんだよ。今まで語尾はさておき、そこまで愉快じゃなかったんだがなぁ。サマエル……お前の影響か?」

「私だってこんな愉快じゃねえよ! こいつは、こんなおっかない顔をしておきながら、近所のおばちゃんたちと井戸端会議をしたり、悩める少年少女を救い、動画配信するまもんまもんになっちまったのは、こいつの個性だ!」

「個性で片付けていい話じゃないだろ。こいつ、一応、俺の配下だから、北欧あたりから動画配信者を育てたいから講義をって、北欧神話の神々暇すぎんだろ!」

「お前に言われたくないでまもんまもん! あと、魔王サタンよ、お前は勘違いしている。俺は魔族ではない!」

「はぁ?」

何を言っているのだこいつ、という顔でサタンはマモンを見た。

さまたんはまた始まったと、次のビールを飲み始めた。

「俺は、まもんまもんを司る神だ!」

「んな神いねえから! 新たな神々にだってそんなのいねえよ!」

「まもんっ、それは奴らがこのマモンに追いついていないからでまもんまもん!」

「……こいつ殴りてぇ」

「……わかる」

さまたんがそっと缶ビールを差し出すと、サタンは一気に飲み干した。

――夏樹不在の向島市も割と平和だった。