軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

90「俺はツッコミ担当じゃなくね?」④

「ちくしょう! もすもす、こしこしのせいで俺の清らかなイメージが! ゆ、る、さ、ん!」

夏樹が魔力を爆発させる。

首を鳴らして、聖剣さんを肩でとんとんしながら、ポーズを決めている男女に近づく。

「そーれーでー! あんたたちはどなたですかー!」

「もすもすもすもすもすもすもすもすもすもすもすもすもす」

「こしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこし」

「いい加減にしやがれぇ! しつこいんだよぉおおおおおおおおおおおお!」

まだ、個性を主張し続けるふたりに、夏樹の限界が訪れた。

聖剣を無造作に振るうと、地面が捲れる。

まるで波のように地面が動き、もすもすとこしこしを襲った。

「もす!」

「こし!」

だが、個性の主張はさておき、ふたりは強い魔力と神力を持っている。

このくらいでどうこうなるとは思っていない。

事実、ふたりを襲った地面は、彼女たちの拳ひとつで左右に吹き飛んだ。

「……やるね」

「もす!」

「こし!」

「この後に及んでも喋らないとか、なっちゃんそろそろ激おこになりそう!」

夏樹が地面を蹴る。

女性のほうに肉薄し、剣を振るう。

「――こし!」

しかし、腰蓑を身につけた男性によって、夏樹の腕が抑えられる。

「こなくそっ!」

「こしこしこし!」

男性の腕力は凄まじかった。

夏樹は身体強化しているため、神々に匹敵する膂力を持つ。

そんな夏樹を腕一本で押さえてみせたのだ。

しかし、夏樹だって負けていない。そのまま勢い任せに、男性を投げ飛ばす。

「もす!?」

女性を巻き込む形で、男性が吹き飛ぶ。

ふたりは器用に、地面に着地する前に、宙で互いの身体を弾き、離れると綺麗に地面に着地する。

(――もすもすとこしこしのせいで三下みたいだけど、やっぱり強いな。特に、こしこしの方は、神の中でも上のほうだ。ちっとやばいかも。もすもすのほうも、高位の魔族だ。リヴァ子さんといい勝負しているんだけど……やば)

こしこしと主張する男性は、強い神気はもちろん、戦いを得意とする神の動きだ。

もすもすと主張する女性は、七つの大罪の魔族リヴァイアサンと同等の力を感じる。

しかも、ふたりとも全力を出してはいない。

様子見程度の力しか見せていないのに、十分すぎるほど強者だとわかる。

どこの神と魔族かわからないが、異世界の住人たちよりも苦戦する予感しかしない。

(リヴァ子さんも底がしれない感じだったけど、ふたりも同じか。ったく、アマイモンとの戦いまでできるだけ力は使いたくなかったんだけど――殺るか)

「聖剣さん! そろそろ真面目に戦うよ!」

「……わかったわよ! べ、別にあんたのために力を貸すんじゃないんだからね!」

「ナイスツンデレ!」

聖剣さんの姿が消え、夏樹の手に持つ聖剣に宿る。

「すう、はぁ」

大きく深呼吸をすると、夏樹は聖剣さんの力を解放した。

「――神鳴りの剣」

雷が迸り、大地と空に震わせる。

「……これが、勇者由良夏樹の力っ!」

魔族グランドルが、夏樹の力を目の当たりにして震える。

その間にも、雷が夏樹を守るように走り、大気を揺らす。

「――さあ、思いっきり殺ろうぜ。中学生のなっちゃんはいい子だからそろそろ就寝の時間だ。寝る前に読む、絵本代わりにぶっ殺してやる」

「ひゃはははははははっ! 人間のくせに、なんだその魔力!? やばくねぇ!?」

「実に見事な魔力だ。まさに勇者! 心が震える!」

「……………」

殺るき満々だった夏樹が、口を開けて変な顔をする。

東雲たちも同じだった。

「いいぜぇ、人間! この俺――最強の獣ベヒモス様が、全力で相手にしてやるぜ!」

黒髪を振り乱し、女性が歯を剥き出しにして笑う。

「とうもろこしの神――フン・フナフプも全力でお相手しよう!」

腰蓑を巻いた男性が、引き締まった肉体の神気を纏わす。

「…………いやいやいやいやいやいやいやいやいや」

夏樹は、急に喋り始めたベヒモスとフン・フナフプに対し、思いっきり叫んだ。

「喋れるなら、最初からちゃんと喋れよぉおおおおおおおおおおおおおお!」