作品タイトル不明
89「俺はツッコミ担当じゃなくね?」③
「もすもすもすもすもすもすもすもすもすもすもすもすもす」
「こしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこし」
まるで拍手に応えるように、男女は大きく両手を挙げて笑顔を浮かべていた。
「あ、駄目だ。絶対、モスマンさんじゃない! ちょっと、男子ー! しっかりしてよー!」
「あかんみたいやね、兄貴に至っては感涙しとるし」
円も呆れている。
「だーかーらー、そんなにUMAが好きなら茨木童子と結婚すればよかったじゃん! UMAの中のUMAだよぉ!」
「なっちゃん、鬼はUMAやないと思うんやけどなぁ」
東雲たちは使い物にならないと判断し、夏樹と円は身構えた。
ふたりと並ぶように立っていたオーガ族の親子も身構えるが、夏樹たちとは違い、顔色が悪い。
汗をかき、心なしか震えているようにも見えた。
「グランドルさん?」
「……なんて力を持っているのだ。まるで、魔王様……いや、それ以上、なのか」
確かに、男女からは凄まじい力が溢れている。
本人たちに隠す気はないようで、力が垂れ流しだ。
特に、女性のほうは魔王ギーゼラを超える魔力だ。
男性のほうは、強い神力を持っているようだが、うまく探れない。
「もすもすもすもすもすもすもすもすもすもすもすもすもす」
「こしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこし」
ふたりは、夏樹を見てなにやらジェスチャーをしてくるが、まるでわからない。
「ちゃんと喋って!?」
ふざけているのか、真面目にやっているのか理解できない。
もし真面目にやっているのであれば、かなりタチが悪いだろう。
「……夏樹」
「聖剣さん?」
「あのもすこしうっさい奴らの正体がUMAでもなんでもいいけど、それなりにできるのは間違いないわよ」
「わかってるよ」
もすもす主張する女性は魔族だろう。
二十歳ほどの背の高い黒髪美女だが、全体的に荒々しいイメージがある。
獣のような髪を伸ばし、革ジャンを羽織った姿はかっこいい系女子だ。
なによりも、スキニージーンズに包まれた足は長い。
見ずともわかる。
――美脚だ、と。
「かなりの強敵だね。目が離せないよ」
「……ええ。この間、ちょっかいかけてきたガープよりも、下手したら上かもしれないわねぇ」
「いやぁ、ガープは美脚でもなんでもないから比べるまでもないような気が」
「――は?」
「あれ?」
(しまったぁあああああああああああああああああ! 聖剣さんは魔力の話をしていたのか!? てっきり、美脚の話をしていると思ってた! なっちゃんのお馬鹿さん! 心なしか、ゴミでもみるような目を向けられている気がする! あと、円ちゃんの視線も冷たいよぉ!)
自らの失言を隠すために、夏樹は聖剣さんを構えると、きりっ、と表情を引き締めた。
「お前たちが何者か知らないが、地球からやってきた新たなる神々に与する者とお見受けする! この正義のギャラクシー河童勇者由良夏樹がいる限り、異世界の平和は守ってみせる!」
とりあえず、取り繕って見たが、聖剣さんと円の視線は変わらなかった。