軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

84「この人誰なんじゃね?」①

さほど時間も経たず、ブレイバーズ王国宮廷魔法使い筆頭レオニー・トットが率いてきた部隊は、三分の二が無力化された。

残った騎士と魔法使いも、レオニーの盾でしかない。

しかし、なにかを守るように、一部の騎士が盾を構えて動かないことも気になる。

「そろそろ決着つけようぜ?」

「由良、夏樹ぃ!」

「だから、気安く名前を呼ぶなって言ってるだろ?」

聖剣さんの切先をレオニーに向ける。

夏樹側の仲間たちは、擦り傷ひとつ負っていない。

いくら夜の襲撃とはいえ、数が売りの人間が、数えられる程度の数で攻めてきたことがそもそも失敗なのだ。

「……僕は貴様のことを過小評価していない」

「そりゃどうも」

「兵を犠牲にして少しでも体力が削れると期待していたのだが、なるほど。この程度では、息も切らさないのか」

「せめて百倍連れてきてほしかったな」

「言ってくれる」

「俺が、この世界で、魔族さんと戦ったときの人数差を考えろよ。なんで百で済むと思ってんだよ。万は連れてこいって」

夏樹はレオニーなど記憶にないが、同じ戦場にいたのなら、圧倒的な数で押し潰そうとする魔族たちの襲撃を知っているはずだ。

その数を、夏樹はひとりですべて撃退したのだ。

なぜ百で済むと思ったのか理解に及ばない。

「まあいいや、そろそろ死のう?」

「僕は貴様を相手にするつもりはない。あくまでも、我が婚約者アマリリス・ブレスコットの命を奪った佐渡祐介だ!」

「だってさ」

よほど復讐をしたいのだろう。

身体になにか仕込んでいることも、夏樹には見えていたが、脅威には思わなかった。

「いや、あの、アマリリス・ブレスコットさんを殺したのは僕じゃなくてガネたんなんだけど。勢い余って轢いちゃって、ぐしゃって」

「その亡骸は腕を残してすべてモンスターに食われてしまった!」

「うわぁ」

祐介はちょっと引いていた。

夏樹としては、亡骸がモンスターに食われることなんて異世界あるあるなので気にしていない。

そんなに大事な相手なら、レオニーが一緒にいればよかったのだ。

何もできなかった怒りはわからないではないが、その感情をこちらに向けられるのは迷惑だし、不快だ。

「わかった、わかった。なっちゃん、優しいから。お前もそのたんぽぽ王女の元へ送ってやんよ!」

「アマリリスだ! この不敬者が! ……ふう、ふう、はぁぁ」

激昂したレオニーだったが、深呼吸をして怒りを抑える。

「由良夏樹、貴様の相手は別の人間が行う。果たして、お前に手出しができるかな?」

「どういう意味?」

「すぐにわかる。――おい! 出番だ!」

レオニーが声を上げると、じっと動かなかった騎士たちが動く。

騎士に守られていたのは、煌びやかなドレスを身につけた女性だった。

歪な腕と歪な魔力を持ち、異様な雰囲気だ。

彼女は夏樹を見ると、満面の笑みを浮かべた。

「嗚呼、わたくしの勇者様! このベアトリス・ブレスコット! あなたと再びお会いできる日を心待ちにしておりました!」

そんなことを言いながら小走りでこちらに向かってくる女性――ベアトリス・ブレスコットに、夏樹は首を傾げた。

「だぁれ?」

見知らぬ女性が、血走った目のままこちらに向かってくる光景は怖かった。

両手を広げて、今にも抱きついてきそうなベアトリスに、

「ギャラクシーまもんまもん河童勇者フォーエバーエターナルキラキラピカピカモエモエぱーんち!」

渾身の蹴りを繰り出した。

夏樹のつま先はベアトリスの腹部に刺さり、彼女はくの字に身体を折る。

「あら、意外に硬い」

少し意外だった夏樹だが、ベアトリスは軽く宙を舞うと、膝から地面に落ち、そのまま吐瀉物を吐き出した。

「おぼえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ」