作品タイトル不明
82「正義のために戦うんじゃね?」③
最初に突っ込んだのは、夏樹だった。
「向島愚連隊特攻隊長ギャラクシー河童勇者様だぁああああああああああああ!」
聖剣を大きく薙ぎ、迫り来る魔法を全て斬り飛ばした。
魔法使いたちの渾身の魔法よりも、夏樹が聖剣さんを一振りするほうが、威力もなにもかもが上だった。
絶句して動きを止めたレオニーたちだが、夏樹は気にしない。
勢いが消えて足を止めた騎士を、唐竹割りにした。
血と臓物が溢れた騎士が、左右に倒れる。
一瞬で、恐怖は伝播し、騎士たちが回れ右して逃げ出した。
「逃がさないからね! 向島市一の紳士こと、大地の勇者佐渡勇者です! よろしくね!」
人には持つことさえ不可能な重量を誇る鉄塊を軽々と片手で構えた祐介が、夏樹を追い越し、その手に持つ鉄塊を振るう。
轟っ、と風がうなると同時に、騎士が数人宙を舞った。
身につけている甲冑などまるで意味をなさない。
手足がひしゃげ、受け身も取れずに次々と地面に落ちていく。
鉄の塊と、大地の勇者の膂力が合わさると、圧倒的な暴力となった。
鋭利な刃物で両断されて即死するよりも、中途半端に苦しむ結果となり、騎士たちが動けずうめく。
「このグランドルも参戦するぞ!」
地面に倒れた騎士を、思い切り踏み潰し、オーガ親子が戦いに加わった。
巨躯から振るわれる剛力は、人間たちを軽々と殴り、蹴り飛ばす。
騎士たちも、人間の中では強いのだろう。だが、恐怖に支配されているため、その実力がまるで出せていない。
我先に逃げ出そうとする者がまともに戦えるはずもなく、グランドルの拳を受け、絶命していく。
「くけけけけけ! 今宵の拙者は血に飢えているでござる!」
キャラが変わってしまっている神奈征四郎が、神剣十束の剣を振るい、騎士を次々斬り殺していく。
その動きは洗練されており、口調はさておき、剣士として異世界の騎士など相手にならない。
彼の背中に張り付く少女も楽しそうに、「きゃっきゃ、きゃっきゃ」と笑っている。
「さ、自分らも、異世界に来たんやから活躍せんとね」
「そうやね」
安倍東雲、安倍円が、それぞれ符を指に挟んだ。
ふうっ、と息を吹きかけると、符は意思を持ったように動き始める。
一枚が、二枚となり、三枚となる。どんどん増えて、紙の巨人が出来上がった。
巨人はふたりに命じられるまま、騎士を掴み投げ飛ばす。その先には、次の魔法を放とうとしていた魔法使いたちがいた。
「そうはさせへんよ。――おいでませ、朱雀」
東雲が、ぱんっ、と柏手を打つと、影から炎の鳥が現れ、空と地面を赤く染めた。
「こけぇえええええええええええええええええええええええええええ!」
大きく胸を膨らませると、朱雀の口から圧縮された炎が吐き出された。
まるでビームのようなブレスに、魔法使いが一瞬で火だるまとなる。
「やれやれ、どいつもこいつも派手なことで」
サングラスを外した七森千手が、倒れる騎士を軽々と躱し、奥の魔法使いたちの前にいた。
「――止マレ」
魔法を撃とうとしていた魔法使いたちが、千手の魔眼に認識されて硬直する。
「――隣ノ人間ヲ殺セ」
千手に命じられるまま、魔法使いたちは懐に隠し持っていた短剣を、隣に立つ同僚の胸に突き立てた。
十人の魔法使いが、一瞬にして絶命した。
「……なるほど、完全に制御できると、格下はこんなもんか。やれやれ、制御ができないくらいでちょうどよかったのかもしれねえな。だが、出し惜しみは無しだ。せっかく異世界に来たんだ、俺の魔眼の練習台にさせてもらうぜ」