軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

80「正義のために戦うんじゃね?」①

ペガサスの首を切り落とし、地面に着地した夏樹は、同じく勇者の祐介と仲良く肩を組んだ。

「やあやあやあやあ! ギャラクシー河童勇者さんだよん! 嫌いなものは異世界と異世界人! 好きなものは――お前らなんかに教えてやらねえよぉおおおおおおおおおお!」

「こーんにーちはー! 改めまして、大地の勇者だよ! 僕の純潔を奪った異世界人は嫌いだし、恨みも憎しみもあるけど、それはまあ置いておくとして。魔族さんは僕のハーレムだからぁああああああああ!」

聖剣の勇者と大地の勇者は絶好調だった。

しかし、まだ勇者はいる。

「そーしーてー!」

「新たな勇者を紹介しまーす!」

「聖剣火輪の剣をときめかせた、向島市にこの人ありのイケメン!」

「太陽の勇者様のご降臨だぁああああああああああああああああ!」

ばーんっ、と無駄に魔法を器用に使って、爆炎の中から三原一登が恥ずかしそうに登場した。

「お前ら、一登に惚れるなよ?」

「火傷しちゃうからね!」

「……どうして夏樹くんと祐介くんはそんなにテンションが高いのかな!? 俺、ちょっと恥ずかしくなってきたよ! これって勇者の洗礼なの!?」

顔を真っ赤にする一登の背後から、千手、征四郎と義政、東雲と円、グランドルにゴールンとガイオン兄弟が続く。

夏樹は、動きを止めた人間たちに、獰猛な笑みを浮かべて大きく手を広げた。

「ようこそ、クソ人間ども。魔族さんの領地に許可なく入りやがって。これから起きることは戦いじゃない。――蹂躙だ」

濃密な殺意と魔力が夏樹から放たれた。

上空にいるペガサスが、恐慌状態になり、地面に落ちてきた。

ぐしゃり、と音を立てて、数体のペガサスと、数人の魔法使いが地面に激突して死んだ。

「……貴様、雰囲気こそ違うが、由良夏樹だな!」

「気安く名前呼ぶんじゃねえよ! 友達だと思われたら恥ずかしいだろ! 俺に異世界人の友達なんていないからー!」

「ふざけたことを! それに、そちらの貴様は、やはり佐渡祐介だな。ベアトリス王女が召喚した第二の勇者か。……そろって人間を裏切るとは、愚かな」

「かっちーん! 裏切ってませーん! 最初から味方じゃないから裏切りようがないですぅー! 勝手に召喚して、ホラーよろしく斧で扉を割って捕まえて、臭い息で迫ってきたから指摘しただけで死刑にするようなブスの中のブスじゃなくて、猫耳を生やした魔族っ子だったら僕は忠誠を誓ってたからね!」

「話が通じない。どうやら、お前たちは魔族に懐柔されたようだ」

リーダー格と思われる少年が、言葉を並べるが、夏樹には届かない。

そもそも、誰だ、という話だ。

自己紹介もできない奴に、名を呼ばれ、裏切り者扱いされて、夏樹が不満でしかない。

「聖剣さん」

夏樹が相棒を呼ぶと、聖剣さんが雷を纏う。

「――我が国の聖剣に選ばれておきながら、魔族に与するとは……あまりにも愚か! こんな奴らのせいで、愛しいアマリリスが亡くなったなんて……許せない!」

魔法使い風の少年から黒い魔力が吹き荒れる。

視認できるほど濃い魔力であるが、それ以上に目を引くのは、魔力が歪んでいることだ。

闇や呪いとは違う。

負の感情を煮詰めた、気持ちの悪い魔力だった。

「許さないのはいいんだけど、そもそもお前誰だよ」

「…………本気で言っているのか?」

怒りを浮かべていた少年が唖然とした顔をした。

そして、震える。

「僕を知らないというのか……一度は共に戦った宮廷魔法使い筆頭レオニー・トットを覚えていないと言うのか!」

「ちらないもん!」

「…………」

「俺と一緒に戦った人間なんていないもん! みんな後ろにいて美味しいところとってたもん! 俺と一緒に戦ってくれたのは、聖剣さんだけだもん!」

夏樹は当時を思い出し、特に悲しくもならないし、涙も流すことはしない。

だが、怒りはある。

平和な世界でのんびり過ごしていた純情な少年の手を殺戮に染めた異世界人の責任は、あまりにも大きい。

「とりあえず、謝罪はいいから慰謝料払ってね。そうしたら、苦しめて殺してあげるから!」