作品タイトル不明
79「なんか来たんじゃね?」②
異世界での二日目が終わろうとしていた。
魔王城の浴場を借り、寝ようとテントに入った向島組。
「――なんか来た」
テントから出た夏樹は、気配を遠くまで飛ばす。
すると、魔族の領地の空にペガサスに乗った魔法使いが、地面には騎士たちがいることを確認する。
「さすが人間どもだ。闇夜に紛れて襲撃とか、清々しいくらいにクソッタレだ」
夏樹が、感情を動かす。
かつて勇者として魔族と戦ったとき、人間たちの上層部の命令で夜間に攻撃を仕掛けることが多かった。
人間にとって、魔族はモンスターと変わらない。だからこそ、身体を休めている夜に、襲撃をするのだ。
夏樹でさえ、当時は不満を抱き、「嫌だ」と訴えたことがある。
無論、人間どもが夏樹の話を聞くはずがなかった。夏樹も、どうせ魔族を殺すことは変わらないので、不満を飲み込んで襲撃をした。
だが、夜間の襲撃を繰り返すと、魔族も学習し、対策をしてくる。すると、明るい時間の戦いが主となった。
「しっかし、百程度でなにができるっていうんだか」
よほど自信があるのか、夏樹が知らない秘密兵器でも持っているのか。
「魔族さんたちの睡眠時間が削られたら大変だ。蹴散らしてくるか」
「まあ、待てって」
夏樹に声をかけたのは、千手だった。
彼だけではない。
他にも、一登、祐介、征四郎、義政、円、東雲、そしてグランドルとゴールン、ガイオンがいた。
「男ども勢揃いじゃん」
「まあな。姐さんたちも気づいているんだろうがな、ここは俺たちに任せてもらおうぜ」
「魔族も人間の襲撃に黙っているわけにはいかぬ。この、グランドル、共に戦おう」
オーガ族族長グランドルはもちろん、彼の息子であるゴールンとガイオンはやる気満々である。
それは、千手たちも変わらない。
「俺はまだ戦ってねえからな。そろそろいいところを見せないとな」
「タイガーさんに?」
「ちげえよ! ぶっ飛ばすぞ!」
グランドルに負けず、千手もやる気に満ちていた。
それは他の面々も変わらない。
「火輪ちゃんも力を貸してくれるし、俺もちゃんと役に立つよ!」
「ご主人様のためなら、人間なんで輪切りですわ!」
一登と火輪の剣も、
「僕の魔族さんたちに手を出そうとするなんて……大地の勇者さんはダークサイドに堕ちそうだよ!」
鉄塊を肩に置く祐介も、
「くけけけけ、今宵の神剣は血に飢えているでござる!」
「すみません。征四郎おじさんは、まだ神剣の制御がちゃんとできていないようです」
人格が変わっている征四郎も、眼鏡をくいくいする義政も、夏樹と共に戦うつもりのようだ。
「千手はんやないけど、そろそろ自分もええところ見せようかなぁって思うんよ」
「ボクもなっちゃんのために戦うで」
飄々とした東雲と、セーラー服姿の円も頼もしい。
――かつて、ひとりで戦った夏樹は、二度目の異世界では仲間たちと共にあった。
「まったく、頼もしいなぁ。んじゃ、まあ! 人間ぶっ殺しますか!」
夏樹が聖剣さんを掲げ、鼓舞すると、全員が腕を上げて応じた。